Swirling by Sun Ra Arkestra 時間とは錯覚である。太陽の光が地表に降り注ぐまでにかかる8分間の遅延、あるいは太陽系に最も近い星=プロキシマ・ケンタウリが放った光が私たちの目に届くまでにかかる4年という歳月を考えてみるとよい。あるいは、銀河の果…
Petrichor by Heather Trost Heather Trostはこの想像力を掻き立てるアルバム『Petrichor』において、サイケデリック・ポップに遊び心あふれる実験的な装飾を織り合わせた奇妙なパッチワークを編んでいて、自然界の美しさへの畏敬の念に満ちた彼女の愛らしい…
Cheater by Pom Poko Pom Pokoの音楽には爆発的な優しさがある。それはまるでPeepを電子レンジに入れるかのようだ。2019年のデビュー作『Birthday』で、このノルウェーのグループはパンチのあるノイズ・ポップと失恋についての歌詞、そして元気いっぱいなボ…
Ways by Xyla デビューアルバム『Ways』において、サンフランシスコを拠点とする、クラシック音楽家から転身したエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー=Xylaは蛇のように曲がりくねったサウンドスケープを作り上げ、リスナーを平凡な日常から連れ…
II - The Next Wave by Quakers 1988年のMarley Marl『In Control Vol. 1』のリリース以来、プロデューサー主導のコンピレーションはラップ・ミュージックの風景に欠かせないものとなった。プロデューサーが自身のシグネイチャー・サウンドを披露し、才能あ…
Immersion Chamber by Lunch Money Life Lunch Money Lifeがそのデビュー・アルバムのタイトルを『Immersion Chamber』と名付けたとき、彼らは自分たちの孤立した部屋(=chamber)につけられることになろうとは思っていなかった。リリースから2週間後、イギ…
Don't Play It Straight by Small Bills (E L U C I D & The Lasso) 「先人たちを褒め称えよ/それはスコアシートの上に飛び散った本物の血/本物の労働/彼らの名前を叫べ」とELUCIDは1曲目 “Safehouse” でラップする。ブルックリンのMC=ELUCIDがミシガン…
Lyric Jonesの「Closer Than They Appear」をApple Musicで Closer Than They Appear - Album by Lyric Jones | Spotify 今年はメインストリームのみならず、アンダーグラウンドで硬派なヒップホップ界隈でも女性ラッパー(非男性ラッパーと言ったほうがいい…
Amapiano Selections by Teno Afrika ジャーナリスト=Jace Claytonが “World Music 2.0” と呼んだもの――「インターネット・カフェや携帯電話機でビートを作り、それをブルートゥースやYouTube、Facebookでシェアするようなキッズたち」――を完璧に体現してい…
PERFUMES AND FRIPPERIES by The Wake 80年代のポスト・パンク・バンドにはThe Wakeという名前のバンドが2組いるということは興味深いが、今回扱うのはオハイオ州コロンバスのバンドであり、イギリスのバンドの方ではない(でもこっちも聴く価値あり)。アメ…
Nothingの「The Great Dismal」をApple Musicで The Great Dismal - Album by Nothing | Spotify Nothingはフィラデルフィアで結成されたシューゲイズ〜ポスト・ハードコア・バンド。しかし中心人物のDominic "Nicky" Palermoが以前にやっていたバンド=Horr…
Don't Shy Away by LOMA Lomaはセルフ・タイトルのデビュー作をリリースしたあと少しドタバタが続いた。この靄がかったようなドリーム・ポップを奏でる三人組は2016年、シンガーのEmily Crossとマルチ奏者のDan Duszynski(当時はCross Recordという名前で活…
Enlightened In Eternity by Spirit Adrift ヘヴィ・メタルに極めて特有である勝ち誇るような輝きは、時にこのジャンルのダークな領域の持つ広大な影によって隠されてしまうことがある――デス、ドゥーム、グラインド、フューネラル・ドゥームといった名前がつ…
Nereïd by Rïcïnn フランスのアーティスト=Laure Le Prunenecは伝統に縛られることを拒絶する。彼女は2016年のインタヴューでこう語っている。「私はいつも自分の声を使って実験をしている。それはジャンルを問わない。ジャズから電子音楽まで、そこには今…
Bichos by Raúl Monsalve y los Forajidos ベース・プレイヤーのRaúl Monsalveは長年に渡ってアフロ‐ベネズエラ・コミュニティの音楽を研究しており、伝統楽器の奏法や、彼らの音楽の他の音楽形態とのつながりについて深く理解してきた。ベネズエラのサウン…
Heritage of the Invisible II by Aquiles Navarro & Tcheser Holmes 2015年、ポリス・ブルータリティに抗議する集会のあとに結成され、批評的にも成功を収めた解放運動ジャズ・クインテット=Irreversible Entanglementsを聴いたことがある人なら、トランペ…
Sen Morimoto by Sen Morimoto シカゴを拠点とする実験的なヴォーカリストにしてマルチ楽器奏者=Sen Morimotoは2作目となるこのセルフ・タイトル作の大半をトランジットの間に書き上げ、それ故にこのアルバムは、身体的にも感情的にもなにか2つのものの間に…
skins n slime by Oliver Coates Oliver Coatesは彼の世代で最も注目されているクラシック音楽家の一人である。ロンドンの王立音楽アカデミーを記録的な成績で卒業した若きチェリストである彼の演奏はあなたもどこかで耳にしているはずだーー映画のサントラ…
Silver Ladders by Mary Lattimore ロサンゼルスを拠点とするハープ奏者=Mary Lattimoreは場所と強固に結びついた音楽を作っている。彼女のデビュー作『At the Dam』はジョシュア・ツリー国立公園(カリフォルニア)とマーファ(テキサス)の超自然的な砂漠…
得点:7.7筆者:Steven Arrovo Sen Morimotoの音楽は開かれた本である。私小説的で断片的な歌詞と、幾重にも重ねられたハーモニーが積み重なっていって彼の動的なジャズ・ラップが出来上がる。しかもそれは重たい本だーーもしかしたら、百科事典くらいに。子…
Sen Morimotoは京都生まれ、マサチューセッツ育ち、シカゴ在住のミュージシャン。最初にジャズとサックスを学んだ後ヒップホップに傾倒し、現在では作品のほぼ全てを自分の演奏で作り上げてしまうマルチ楽器奏者である(「ジャズ・ラッパー」という表記を主…
Auto by Wendy Eisenberg Wendy Eisenbergというギタリストの名前は数多くの文脈で出現するため、読者の中にもその中の一つによって知っているかもしれない。かの悪党ロック・バンド=Birthing Hips(2017年の名作『Urge to Merge』を残して解散)の中心をな…
Vari-Colored Songs: A Tribute to Langston Hughes by Leyla McCalla クラシックとフォークのソングライター/マルチ楽器奏者のLeyla McCallaはこの『Vari-Colored Songs』の楽曲を、ハーレム・ルネッサンスの巨人=Langston Hughesの作品の中から特に強力…
Phoenix: Flames Are Dew Upon My Skin by Eartheater Eartheater名義の作品の中で、Alex Drewchinは「変身」を重要視している。彼女の楽曲はクラシックの作曲、未来的なエフェクト、自然主義的なフォーク、クラブ・ミュージックのプロダクション、技巧派の…
Yogo Yogo by Penny Penny 『Yogo Yogo』はPenny Pennyの出世作であり、彼の南アフリカ随一の名士という地位を確立した。1996年に8日間という短さで録音されたこのダンス・レコードは、この国が比較的新しい政治的な自由を謳歌している中で制作された:アパ…
Nobody Lives Here Anymore by Cut Worms Max Clarkeに拍手を贈ろう。20世紀中盤の陳腐なポップ・バラードに根付いた音楽を、皮肉を込めてやるわけでもなく、NPRによって音楽の趣味が形成されたような人たちをめがけてやるわけでもなく、そういう音楽を作ろ…
Project:00 (プロジェクト00) by Cryostasium feat. MEIKO (メイコ) 2004年に発明されて以来、ボーカロイドはオートチューンのめちゃくちゃキュートないとことして機能してきた。これらのアニメアバターによる人工音声のボックスは、人間の歌唱の正確性と…
Nothing EP by Loraine James ロンドン生まれのプロデューサー=Loraine Jamesはプログレッシヴな電子音楽の世界において強力な新生である。彼女の最新EP『Nothing』は2019年のHyperdubからのデビュー作にして、想像力豊かなスタイルの融合を通じてクィアな…
Black Thoughtは1987年に結成されたヒップホップ・バンド=The Rootsのフロントマン。ドラマーのQuestloveが繰り出す極上のグルーヴに乗っかる彼のラップはそのたぐいまれなライミングのスキルや高度な比喩表現によるボースティングによって「ヒップホップ・…
HA Chu by Pan Amsterdam 2000年にニューヨークのジャズ・シーンにおける「期待の新人」と言われながらも、トランペッターのLeron Thomasはそれに反して悪評を刻み続けた。彼自身の考案である “other music” というスタイルーージャンルやコラボレーションの…