海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Penny Penny, “Yogo Yogo”

『Yogo Yogo』はPenny Pennyの出世作であり、彼の南アフリカ随一の名士という地位を確立した。1996年に8日間という短さで録音されたこのダンス・レコードは、この国が比較的新しい政治的な自由を謳歌している中で制作された:アパルトヘイトの撤廃とネルソン・マンデラの当選がそのたった2年前に起こっていた。

だからこそ、Penny Pennyは90年代初頭に切望された存在であった。良くシャツを脱ぎ笑顔を輝かせ、金のネックレスとポニーテール姿だった彼は、白人の少数派の圧力の下衰弱していた市民の自由を再発見する存在として立ち現れた。以前は守衛、金山の炭鉱夫、そして飲食店のオーナーといった仕事をしていたPennyは1994年にどこからともなく出現し、デビュー作『Shaka Bundu』はまぎれない人気作となりすぐさまに25万枚を売り上げた。彼は大陸中のスタジアムでパフォーマンスをするようになり、次回作への期待は高まるばかりであった。

Joe Shirimaniによってプロデュースされたこの『Yogo Yogo』は団結というテーマを乗せた作品だ。南アフリカの黒人たちの中でもどれだけ異なる文化を持っていようとも、我々は肌によって固く結ばれており、一つのコミュニティとして行動するべきだという考えである。公共教育(“Ingani”)、言語、そしてドラッグ使用の危険(“Kulani Kulani”)といった様々なトピックに踏み込んでいるこの作品だが、『Yogo Yogo』はいまだに過去の不正義から立ち直ろうとしていたこの国の市民たちに平穏を与えるために作られた集大成的な作品であった。明白な政治的声明ではないが、安堵のため息であり、明るい日々に向けた祝祭のダンスである。

By Marcus J. Moore · October 12, 2020

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