海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Sen Morimoto, “Sen Morimoto”

シカゴを拠点とする実験的なヴォーカリストにしてマルチ楽器奏者=Sen Morimotoは2作目となるこのセルフ・タイトル作の大半をトランジットの間に書き上げ、それ故にこのアルバムは、身体的にも感情的にもなにか2つのものの間に嵌ってしまって身動きが取れない人間の肖像画のように感じられる。アルバムの幕開けとなる “Love, Money Pt. 2” でMorimotoは尋ねる。「愛、それは君にとってなに?/お金、それは君にとってなに?/君にはどちらも必要なの?ぼくには2つとも必要だ」。“Woof” で彼は現実と彼の潜在意識の区別をつけることに苦しんでいる。明るくエアリーなギターの上で彼は再び尋ねる。「自分自身の影からどうやって逃げればいい?/それを打ち明けられると思う?/どうすれば狂気を見失わずに済む?ぼくがなにを喋っているのか、わかるだろう」。Lala Lala、Qari、Kara Jacksonといったシカゴのクルーが全面的に参加した “Taste Like It Smells” ではMorimotoはツアーの消耗について嘆いている。そして最後から2番めの “Nothing Isn't Very Cool” で、Morimotoはこの作品のインスパイア元となった感情を響きわたらせる:「自分のハートは何とも引き換えない/クールなものなんてない/君がしゃべることに夢中だ、だって毎日違うんだから/ぼくが祈る時に挙げる物事全てに愛を/この人生はリアルでもなければフェイクでもない」。

By Tara C. Mahadevan · October 20, 2020

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