海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>The Wake, “Perfumes and Fripperies”

80年代のポスト・パンク・バンドにはThe Wakeという名前のバンドが2組いるということは興味深いが、今回扱うのはオハイオ州コロンバスのバンドであり、イギリスのバンドの方ではない(でもこっちも聴く価値あり)。アメリカのThe Wakeは80年代なかばにわかりやすくゴス的なスタイルを取り入れていた。彼らが四半世紀ぶりに発表した新しいアルバム『Perfumes and Fripperies』も、彼らの90年代始めの路線を踏襲している。そして、かつてはかなり独特なサウンド〜アプローチであるとみなされていたものがタイムレスな美学を持って熟成したとき、それが暗い時代と合わないことなんてあるだろうか?

1曲目の “Daisy” から、Rich Witherspoonによるスロウなギターのグラインドの上にシンガー=Troy Payneの座礁したクルーン声が乗り、聴き手にこのアルバムがどんな作品であるかをはっきりと伝えている。James TramelとDaniel C.によるリズム・セクションは楽曲にふさわしくストンプ風で、リード・シングル “Hammer Hall“ でペースが上がるところなんかはこの手の好事家にはたまらないだろう。アルバムのタイトルは破滅的な(もしくは少なくとも黒い衣服を身にまとった)ロマンティシズムを生き生きと表していて、Payneによる歌詞もそれを伝えている。その感傷は “Hammer Hall” での償いのために跪くことから、“Break Me Not”、“Emily Closer”、そしてわかりやすいところでは “Marry Me” に見られるような表題通りの祈りまで幅広い。“Rusted 20” はハイライトで、Witherspoonのビッグなギター・ラインがグイグイと楽曲を推し進めていく。しかし続く “Everything” ではDavid Wolfendenのギターをゲストに迎え、Tramelの卓越したベースと不気味な網目を織りなしながらPayneのボソボソとつぶやく祈りを下から支えている。

By Ned Raggett · October 28, 2020

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