海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Teno Afrika, “Amapiano Selections”

ジャーナリスト=Jace Claytonが “World Music 2.0” と呼んだもの――「インターネット・カフェや携帯電話機でビートを作り、それをブルートゥースYouTubeFacebookでシェアするようなキッズたち」――を完璧に体現している音楽のスタイルが一つあるとしたら、南アフリカのアマピアノ・ミュージックがそれである。

ハウテン州に多くいる若いベッドルーム・プロデューサーたちのクリエイティヴィティと才覚によって2010年代なかばに誕生したこのアマピアノは。WhatsAppやシェアリング・プラットフォームによって急速な広がりを見せ、電波上においてもクラブにおいても南アフリカに最も結びついたハウス・ミュージックのジャンルとなった。非常に現代的なものでありながら、このジャンルはこの地区に根付いている様々な音楽的歴史の糸をつなぎ合わせている:ハイピッチでジャズ風の鍵盤――ジャンル名の「ピアノ」はここから取られている――クワイトのワイドなベースライン、パーカッシヴなdiBacardiのパターン、そしてディープ・ハウス風のシンセ、これらがアマピアノのレトロな引用源の一部である。明るい雰囲気と絶え間ないログ・ドラムによって、このスタイルは南アフリカ特有のグルーヴ・サウンドのエッセンスを捉えていて、そのノスタルジックな要素はひょっとすると更に広い成功の鍵であるかもしれない。

南アフリカ国外の人たちにとっては、このAwesome Tapes from Africaからリリースされた『Amapiano Selections』はこういったサウンドと初めて出会う機会となるかもしれない。19歳のプロデューサー=Teno Afrikaはアマピアノの多面的な側面を吸収しそれをこのデビュー作に詰め込んでいる。多くの楽曲はインストゥルメンタルで、これらの5〜7分の楽曲を聴けば自由な、パンデミック以前の夜のダンスフロアを切望せずにはいられないだろう。しかしほぼ全世界でクラブ・カルチャーが停止状態に追いやられている中でも、若いアマピアノのプロデューサーたちは音楽を作り、トラックをシェアし、自分たち独自のナラティヴを作り上げている。インターネットがもたらした自由を手に、Teno Afrikaのようなプロデューサーはローカルなシーンを世界的なインパクトで後押ししている。

By Megan Iacobini de Fazio · October 29, 2020

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