海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

ヒップホップ/ラップ

<Bandcamp Album of the Day>Jimmy Edgar, “Cheetah Bend”

CHEETAH BEND by JIMMY EDGAR Jimmy Edgarは常に予測不可能なアーティストである。このデトロイト出身の天才児は、多くのエレクトロニック・ミュージックのサブジャンルや多様なコラボレーターの間を行ったり来たりしながら、自身の創作の行く先が向くままに…

<Bandcamp Album of the Day>Slowthai, “TYRON”

TYRON by slowthai 自身のデビュー作『Nothing Great About Britain』において、ノーサンプトンのラッパー=Slowthaiはネグレクトされてきた世代の怒りを無秩序でパンクに影響されたヒップホップへと昇華させた。このアルバムはSlowthaiの貧しい労働階級の出…

<Bandcamp Album of the Day>Madlib, “Sound Ancestors”

Sound Ancestors by Madlib 理論上、MadlibとFour Tetの組み合わせは奇妙であるように思える:前者はジャズ、ファンク、ヒップホップに根差した、サンプルを主体にしたビートを作るのに対し、後者は電子音をきしませ、そこにテクノ、アンビエント、難解なダ…

<Bandcamp Album of the Day>Pink Siifu & Fly Anakin, “FlySiifu’s”

FlySiifu's by Pink Siifu & Fly Anakin ラッパー=Pink SiifuとFly Anakinのコラボレーション・プロジェクトの最初のスキットは、二人の人気上昇中のMCがFlySiifu'sという架空のレコード・ショップを経営していて、それに続くこの22曲入りのアルバムは昔な…

<Bandcamp Album of the Day>Quakers, “Quakers II: The Next Wave”

II - The Next Wave by Quakers 1988年のMarley Marl『In Control Vol. 1』のリリース以来、プロデューサー主導のコンピレーションはラップ・ミュージックの風景に欠かせないものとなった。プロデューサーが自身のシグネイチャー・サウンドを披露し、才能あ…

<Bandcamp Album of the Day>Small Bills (ELUCID & The Lasso), “Don’t Play It Straight”

Don't Play It Straight by Small Bills (E L U C I D & The Lasso) 「先人たちを褒め称えよ/それはスコアシートの上に飛び散った本物の血/本物の労働/彼らの名前を叫べ」とELUCIDは1曲目 “Safehouse” でラップする。ブルックリンのMC=ELUCIDがミシガン…

<Bandcamp Album of the Day>Pan Amsterdam, “HA Chu”

HA Chu by Pan Amsterdam 2000年にニューヨークのジャズ・シーンにおける「期待の新人」と言われながらも、トランペッターのLeron Thomasはそれに反して悪評を刻み続けた。彼自身の考案である “other music” というスタイルーージャンルやコラボレーションの…

<Pitchfork和訳>Black Thought: Streams of Thought, Vol. 3: Cane & Able EP

点数:6.9評者:Stephen Kearse The Rootsの長いキャリアの中でも最も鳥肌ものの瞬間の一つが、Black Thoughtのラップの筋肉をこれでもかと見せつける “75 Bars (Black's reconstruction)” である。彼の熱のある長いヴァースはあるで不時着のような衝撃で、…

<Pitchfork和訳>Jay Electronica: Act II: The Patents of Nobility (The Turn)

点数:8.7 [Best New Music] 筆者:Matthew Ismael Ruiz Jeff “Chairman” Maoによって行われた2010年のインタビューの中で、Jay Electronicaは自身にまつわる神秘的な雰囲気は混乱のもとであると認めた。「みんながなんでそんな事を言うのかわからない。俺は…

<Pitchfork和訳>Linkin Park: Hybrid Theory (20th Anniversary Edition)

得点:7.6 筆者:Gabriel Szatan 聴いている人たちに打ち勝つよう語りかけ続けた、その闘いに遂にチェスター・ベニントン自身が負けてしまったのは、彼が41歳の時だった。Linkin Parkの音楽を形作る特徴とは、トラウマと向き合っていくための手段をリスナー…

<Bandcamp Album of the Day>Vritra, “SONAR”

SONAR by Vritra イングルウッドを拠点として活動するラッパー=Vritraは10年代のはじめ、不作法で、荒々しいほどに成功を収めたOdd Futureコレクティヴの創設メンバーとして知られていた。今では10年以上のソロ・キャリアを持つ彼の最新作『SONAR』では、そ…

<Bandcamp Album of the Day>Black Soprano Family, “Benny the Butcher & DJ Drama Present: Black Soprano Family”

Benny the Butcher & DJ Drama Present: The Respected Sopranos by BLACK SOPRANO FAMILY Black Soprano FamilyのBenny the ButcherとDJ Dramaという組み合わせは、一聴すると興味深い提案のように聞こえる。Griseldaの一員であるBennyは、90年代イースト・…

<Bandcamp Album of the Day>Oddisee, “ODD CURE”

ODD CURE by Oddisee 『ODD CURE』はアルバムと言うよりは、COVID-19の世界的パンデミックの初期段階に際して、それに人生を適応させようとするさまを描いた人間研究記事の、ヒップホップ版である。このプロジェクトはOddiseeが自身の住むブルックリンのスタ…

<Bandcamp Album of the Day>MIKE, “weight of the world”

weight of the world by MIKE ニューヨークのラッパー、MIKEが自身のアルバムに『Weight of the World』というタイトルをつけるのにこれだけの時間がかかったことは、ある意味では驚きである。2017年の出世作『May God Bless Your Hustle』以来、彼の音楽を…

<Bandcamp Album of the Day>Armand Hammer, “Shrines”

Shrines by Armand Hammer Armand Hammerの音楽を通して世界を見るというのは、1988年のジョン・カーペンター作SF映画『ゼイ・リヴ』に登場するサングラスを装着するのと似ている。この二人組みの4作目『Shrines』の、Elucidとbilly woodsによる自由な連想に…

<Bandcamp Album of the Day>Ric Wilson and Terrace Martin, “They Call Me Disco”

They Call Me Disco by Ric Wilson, Terrace Martin シカゴのラッパー=Ric Wilsonとロサンゼルスのプロデューサー=Terrace Martinはこの共作EP『They Call Me Disco』に最大限の勢いと信じられないほどの温かさをもって取り組んでいる。作品の冒頭から即時…

<Bandcamp Album of the Day>Bishop Nehru, “Nehruvia: My Disregarded Thoughts”

Nehruvia: My Disregarded Thoughts by Bishop Nehru 2012年、Bishop Nehruはデビュー・ミックステープ『Nehruvia』を自主制作でリリースした。物憂げな雰囲気のその16歳は人生についての大人びた考え方と、酩酊感のあるループと愉快で朦朧としているドラム…

<Bandcamp Album Of The Day>KinKai, “A Pennies Worth”

A Pennies Worth by KinKai イングランドのマンチェスターで生まれ育ったラッパーのKinKaiの最新フル・アルバム『A Pennies Worth』は、涼し気なフックとゴージャスでジャズ風のプロダクションを持つチル・ヒップホップ・チューンを集めた印象的なコレクショ…

<Bandcamp Album Of The Day>Quelle Chris & Chris Keys, “Innocent Country 2”

Innocent Country 2 by Quelle Chris & Chris Keys Quelle Chrisとプロデューサー・Chirs Keysによるコラボレーション、『Innocent Country』(2015)で、このラッパーはその時まで常套手段としていたストーナー自慢のヴァースからの変化を示した。そのアルバ…

<Bandcamp Album Of The Day>Shabazz Palaces, “The Don Of Diamond Dreams”

The Don Of Diamond Dreams by Shabazz Palaces Shabazz Palacesは長年、より良い世界というのは100%政治的なヒップホップでも、100%物質主義的なヒップホップでもカヴァーしきれないような、そんなルートで可能になるものであるという立場で活動してきた…

<Bandcamp Album Of The Day>Statik Selektah & Termanology, “The Quarantine”

The Quarantine by Statik Selektah & Termanology 世界保健機関がCOVID-19ウイルスの全世界的流行(パンデミック)を宣言し、国中の都市がその感染拡大を抑え込もうと必要な策を講じ始めてから3日が経過したあと、Statik SelektahとTermanology―1982という…

<Bandcamp Album Of The Day>R.A.P. Ferreira, “purple moonlight pages”

purple moonlight pages by R.A.P. Ferreira 2018年10月1日、ラッパーのmiloはそれまでよく知られていたステージ・ネームを公式にやめる事を宣言した。何年もの間、本名・Rory Ferreiraはその名前を使って多くの献身的なファンを獲得してきた。ファンたちは…