海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

Pitchfork和訳

<Pitchfork Sunday Review和訳>Alicia Keys: Songs in A Minor

J • 2001 1998年の夏、アリシア・キーズはすでに彼女のデビュー作『Songs in A Minor』をほぼ完成させていた。しかし彼女が所属するコロンビア・レコードは違う方向性を目指したほうがいいと告げた。そう、彼女はクラシックの教育を受けたピアニストであり、…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Anita Baker: Rapture

ELEKTRA • 1986 「クワイエット・ストーム」とは、70年代末期に、小石のようにすべすべとしたR&Bのバラ―ドに対して名付けられたブラック・ラジオ用語である。サブジャンルの名前がそれ自体に最適な文脈を示唆する形で名付けられることは珍しいことだ。アイズ…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Nina Hagen: Nunsexmonkrock

CBS • 1982 ニーナ・ハーゲンはドイツ出身で、オペラを歌い、パンク・ロック文化の発火点となった人物である。1980年にメジャー・レーベル契約を結びキャリアをスタートさせた彼女はヨーロッパで莫大な売上を記録し、多くのファンが彼女が演奏する空間を埋め…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Yellow Magic Orchestra: BGM

ALFA・1981 日本式のアクロニムで、「BGM」とは「バックグラウンド・ミュージック」を意味する。それはYellow Magic Orchestraの細野晴臣の80年代の至福のアンビエント作品を想起させる。どこか牧歌的で、ヒップでマスマーケット的な衣料店から流れてくるよ…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Genesis: Duke

CHARISMA • 1980 1980年代、名声の有頂天にいたフィル・コリンズは、たくさんの、たくさんの批評家に向けて手紙を書くようになっていた。ドラマーからボーカルへと転向したジェネシスの一員として、そして一連のブロックバスター的ソロ作を通じて、彼ほどの…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Katy Parry: Teenage Dream

Capitol / 2010 勝負の時が来たならば、その時が勝負のときである:『Teenage Dream』は終わることのないサマー・バケイションを約束してくれる。それは仮死状態の中で生きていて、常に週末を楽しみにしていて、決して仕事に出かけることなどない。ケイティ…

<Pitchfork Sunday Review和訳>A.R. Kane “69”

Rough Trade / 1988 1985年のある晩、The Cocteau Twinsが珍しくテレビに出演した。橙色の輝きに包まれながら、その年に発表された『Tiny Dynamine EP』に収録された “Pink Orange Red” を演奏していた彼らはどこか別の世界の住人のようなオーラを放出してい…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Sylvester: Step II

Fantasy / 1978 1986年の大晦日、シルヴェスターは「The Late Show With Joan Rivers」にそびえ立つように高く、オレンジのシャーベット用な色をしたウィッグに、装飾が施されたパンツスーツという姿で登場した。彼の出世作となったシングル、ミラーボール・…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Devin the Dude: Just Tryin’ Ta Live

Rap-A-Lot / 2002 Devin Copelandはラップよりもブレイクダンスに熱中していた。テキサスを渡り歩いていた1980年代中盤、彼は目に入ったダンス・クルーであればどのクルーとでも繋がりを持つことが出来た。ありのままの彼自身でいることは、彼が思いつくよう…

Pitchforkが選ぶ2010年代ベスト・ソング200 Part 32: 45位〜41位

Part 31: 50位〜46位 45. Robyn: “Call Your Girlfriend” (2010) www.youtube.com “Call Your Girlfriend” ほど棘が多くやっかいなシナリオの中で踊り切ることができるのは、スウェーデンの大人気ティーン・ポップ歌手から自己決定権を持ったスーパースター…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 31: 50位〜46位

Part 30: 55位〜51位 50. Arcade Fire: “Sprawl II (Mountains Beyond Mountains)” (2010) www.youtube.com “Sprawl II (Mountains Beyond Mountains)” は2010年のアルバム『The Suburbs』、そしてその時点までにArcade Fireが成し遂げてきたものすべてのク…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part30: 55位〜51位

Part29: 60位〜56位 55. Bat for Lashes: “Laura” (2012) www.youtube.com タイトルにもなっている登場人物「Laura」は危機に陥っている夢追い人で、群衆に置き去りにされパーティーに疲れ果てた社交界の名士である。Natasha Khanだけが彼女の傍に寄り添い、…

<Pitchfork和訳>Sen Morimoto: Sen Morimoto

得点:7.7筆者:Steven Arrovo Sen Morimotoの音楽は開かれた本である。私小説的で断片的な歌詞と、幾重にも重ねられたハーモニーが積み重なっていって彼の動的なジャズ・ラップが出来上がる。しかもそれは重たい本だーーもしかしたら、百科事典くらいに。子…

<Pitchfork和訳>Black Thought: Streams of Thought, Vol. 3: Cane & Able EP

点数:6.9評者:Stephen Kearse The Rootsの長いキャリアの中でも最も鳥肌ものの瞬間の一つが、Black Thoughtのラップの筋肉をこれでもかと見せつける “75 Bars (Black's reconstruction)” である。彼の熱のある長いヴァースはあるで不時着のような衝撃で、…

<Pitchfork和訳>Jay Electronica: Act II: The Patents of Nobility (The Turn)

点数:8.7 [Best New Music] 筆者:Matthew Ismael Ruiz Jeff “Chairman” Maoによって行われた2010年のインタビューの中で、Jay Electronicaは自身にまつわる神秘的な雰囲気は混乱のもとであると認めた。「みんながなんでそんな事を言うのかわからない。俺は…

<Pitchfork和訳>Linkin Park: Hybrid Theory (20th Anniversary Edition)

得点:7.6 筆者:Gabriel Szatan 聴いている人たちに打ち勝つよう語りかけ続けた、その闘いに遂にチェスター・ベニントン自身が負けてしまったのは、彼が41歳の時だった。Linkin Parkの音楽を形作る特徴とは、トラウマと向き合っていくための手段をリスナー…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 16: 50位〜41位

Part 15: 60位〜51位 50. Grimes: Visions (2012) Claire BoucherがGrimesとして発表した最初の2枚は、彼女のポップ的本能を実験的操作の奥底に沈めてしまっていた。3作目となる『Visions』は新たに解き放たれた才能とそれを使いこなすことへの興奮できらめ…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Rage Against the Machine: The Battle of Los Angeles

Epic・1999年 文:Jeremy D. Larson 点数:8.7 急進的ラップ・ロック・バンドの3作目にして、1999年の停滞の中に産み落とされた、彼らの最も鋭い革命的演説 2000年の民主党全国大会で、クリントン大統領が基本政策演説を行おうとしていたステイプルズ・セン…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 29: 60位〜56位

Part 28: 65位〜61位 60. Future: “March Madness” (2015) www.youtube.com “March Madness” の大半では、Futureは自分の豪勢な暮らしを詳細に語っている。特にこの時期にあって、それは非常に真実らしくに聞こえた。このアトランタのラッパーは2015年、Drak…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 28: 65位〜61位

Part 27: 70位〜66位 65. Drake: “Worst Behavior” (2013) www.youtube.com 2013年、我々は“タフなドレイク”と出会った。『Nothing Was the Same』は彼の車高デビューパーティーで、“Worst Behavior”は彼のアンセムだった。若きドレイクが気まずそうに的を得…

<Pitchfork和訳>Haim: Women in Music Pt. III

Haim: Women in Music Pt. IIIColumbia, 2020 Score: 8.6 [Best New Music]By: Aimee Cliff, June 25 2020 この3人組の3作目はぶっちぎりで彼女たちのベストである。親密で、多面的で、幅広く、彼女たちのパーソナリティと、メロディやスタイルへの高い関心…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 15: 60位〜51位

60. King Krule: The OOZ (2017) 2013年にデビュー・アルバム『6 Feet Beneath the Moon』をリリースしたとき、Archy Marshallは19歳にして自身に満ち溢れていた。都市が荒廃していく中、ロンドンの裏路地を大いばりでうろつきまわる悪党だった。King Krule…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 27: 70位〜66位

Part 26: 75位〜71位 70. Beach House: “Zebra” (2010) www.youtube.com Beach HouseのシンガーVictoria LegrandはバンドメンバーのAlex Scallyによるインストのデモを聴いて、その振り子のようなリフとドラマティックなクラッシュ・シンバルにシマウマを思…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 14: 70位〜61位

Part 13: 80位〜71位 70. Perfume Genius: No Shape (2017) Mike Hadreasによるアヴァン・ポップ・ユニット、Perfume Geniusによる4作目『No Shape』は、ベルや笛、バロック風のストリングセクションの使用をも厭わない、真実の愛に向けられた熱狂的な頌歌で…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 26: 75位〜71位

Part 25: 80位〜86位 75. DJ Koze: “Pick Up” (2018) www.youtube.com DJ Kozeのすごいところは、トレンドに影響されることなく、軽いサイケデリックな霧がかかった温かくファンキーなトラック、切望や希望、悲しみを根源的な人間の痛みとして一つに束ねてし…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part13: 80位〜71位

Part 12: 90位〜81位 80. Aphex Twin: Syro (2014) 『Syro』という作品は、自分がそもそも何故エレクトロニック・ミュージックと恋に落ちたのか思い出したいときに立ち戻ってくる作品である。この作品を楽しむということは、完璧に遂行された作曲の基礎を心…

<Pitchfork Sunday Review和訳>The KLF: Chill Out

KLF Communications, 1990By: Philip Sherburne, February 16, 2020 8.9 KLFによるサンプルを多用したドリームスケープ、アンビエント・ハウス・ミュージックにおいて最も影響力を持つ作品の一つ 1959年、James Tennyという名の若い作曲家が、先進的な考えを…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 12: 90位〜81位

Part 11: 100位〜91位 90. Joyce Manor: Never Hungover Again (2014) 3枚めとなるこのアルバムで、カリフォルニアのポップ・パンク・バンドJoyce Manorは持ち味のヒリヒリするようでふわふわとしたサウンドを蒸留し、パワーとメロディの極めて自然な一陣の…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 25: 80位〜76位

Part 24: 85位〜81位 80. Blood Orange: “You’re Not Good Enough” (2013) www.youtube.com アーティストが音楽を自分のセラピーであると語るのはクリシェであるが、Dev Hynesは我々なら患者と医者の間の秘密にしておくようなことを本当に音楽の中でシェアし…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 24: 85位〜81位

Part 23: 90位〜86位 85. Charli XCX: “Track 10” (2017) www.youtube.com Charli XCXは「聴くSF」である。愉快なほどにロボット風で、風変わりなほどに宇宙的な彼女は2017年のミックステープ『Pop 2』で自分が何処へ向かっているのか、そして何処を目指すこ…