<Bandcamp Album of the Day>Wendy Eisenberg, “Auto”
Wendy Eisenbergというギタリストの名前は数多くの文脈で出現するため、読者の中にもその中の一つによって知っているかもしれない。かの悪党ロック・バンド=Birthing Hips(2017年の名作『Urge to Merge』を残して解散)の中心をなす多彩なギタリストであった。またTrevor DunnとChes Smithと共に、John Zornのプロデュースで騒々しい即興作品『The Machinic Unconscious』をリリースしている。さらにはVDSQが長く続けている前衛的なギター作品シリーズに参加した2018年の『Its Shape Is Your Touch』がある。彼の人はDerek Baileyがかつて探求していたような弦を叩いたり不協和音を鳴らすような美しさにユーモアと不思議さを付け加えた音楽性が特徴だ。これらのプロジェクトーーあるいはEisenbergがこれまでに参加してきたコラボレーションやバンドーーの中から2つを取り出して、その間に何のつながりも見つけられないということは十分に起こりえることである。
しかしEisenbergのBa Da Bingから初のリリースとなる『Auto』はこれら直近の演奏を統合し、あるいは拡張した魅力的な作品である。明るいメロディーと暗いメロディーが交互に登場し、それが不気味なギターのラインの周りで曲げられたり伸ばされたりしながら、バンド全体がリズム的ないたずらを楽しんでいるような、Eisenbergのアヴァン・ポップの小曲が並ぶ。これまでの外部での作品が同時に鳴らされているようである。“Futures” はDeerhoofが何十年もの間築いてきたその魅力を曲芸のように包摂した一曲で、“The Star” はRadiohead、Stereolab、Gastr del Solといったバンドたちの間を行くくねくねと曲がりくねった道を進んでいく。“I Don't Want To” の盛り上がっていく部分で鳴らされるアコースティック・ギターの短い音色はまるでブラック・メタル・バンドのようで、“The Star” でのエレクトリックな音色との間のスペースが、まるで明るい絵画作品につけられた黒い額縁のように、そのけばけばしいメロディを強調するのを手助けしている。これらの素晴らしく歪められた楽曲群に面食らうかもしれないが、何日か経つと、それと気づかぬうちにハミングで口ずさんでいる自分に気がつくだろう。
しかし『Auto』が真に素晴らしいのは、これらの一軒変わった楽曲の中で光っている脆弱さである。Eisenbergは “Centreville” で子供時代の癒えない傷に思いを馳せ、“Give It A Year” では自己改善と変化の問題と恣意的な順番で格闘している。“Hurt People” では彼の人のフリーランスとしての生活を孤独で狂気に満ちていると歌い、世代間の反アンセムである “Slow Down” では年齢を受け入れて社会との関係を希薄にすることが自由を感じさせることがあるということを認めている。『Auto』は、音楽の複雑さは作品をくり返し聞くことで気づかれるものであるという考え方を転覆させている。Eisenbergはこれら13曲の複雑さを前景化することによって、その核にある基本的な人間性を見事に暴き出している。
By Grayson Haver Currin · October 15, 2020