海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Xyla, “Ways”

デビューアルバム『Ways』において、サンフランシスコを拠点とする、クラシック音楽家から転身したエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー=Xylaは蛇のように曲がりくねったサウンドスケープを作り上げ、リスナーを平凡な日常から連れ出し、未踏の可能性の領域へと連れて行ってくれる。独学で学んだプロダクションのメソッドを通じて、Xylaはクラシックで用いられる楽器のサンプルを使用してフットワークからIDM、テクノ、アンビエント、ジャズへとなめらかに流れるようなトラックを作っている。心の痛み、喪失、そして新たな始まりがもたらす高揚感のような、様々な感情の複合体を想起させるような音楽だ。

この作品は、生い茂るようなシンセと風変わりでピッチが高いサンプルがフット―枠的パーカッションの中で盛り上がっていくような “Shoot” で幕を開ける。そしてそれはIDMやテクノに影響されたであろう “Feel” へとつながっていく。“Feel” がクラブ・セットに用いられるところが容易に想像できるのは偶然ではないように思える。Xylaは感情的な浮き沈みをこの『Ways』の中で表現していて、リスナーを黙想的な、内省的なヘッドスペースへと押し込んでいく。ボイス・サンプルを用いた数少ない楽曲の一つ “Now” ややヘヴィでメランコリックなシンセが、楽曲の中で現れたり消えたりする、重ねられたクワイアのサンプルの上に乗っている。ムーディーな雰囲気の中にもなにか差し迫ったものを感じさせる、濃厚な音の探検である。Xylaは『Ways』の中で次々と我々を驚かせてくれる。ジャンルの境界線というものを再考し、優美さと脆弱性を持った流動性や変化というものを受け入れるよう我々を促しているかのようだ。

By Amaya Garcia · November 04, 2020

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