2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧
Heritage of the Invisible II by Aquiles Navarro & Tcheser Holmes 2015年、ポリス・ブルータリティに抗議する集会のあとに結成され、批評的にも成功を収めた解放運動ジャズ・クインテット=Irreversible Entanglementsを聴いたことがある人なら、トランペ…
Sen Morimoto by Sen Morimoto シカゴを拠点とする実験的なヴォーカリストにしてマルチ楽器奏者=Sen Morimotoは2作目となるこのセルフ・タイトル作の大半をトランジットの間に書き上げ、それ故にこのアルバムは、身体的にも感情的にもなにか2つのものの間に…
skins n slime by Oliver Coates Oliver Coatesは彼の世代で最も注目されているクラシック音楽家の一人である。ロンドンの王立音楽アカデミーを記録的な成績で卒業した若きチェリストである彼の演奏はあなたもどこかで耳にしているはずだーー映画のサントラ…
Silver Ladders by Mary Lattimore ロサンゼルスを拠点とするハープ奏者=Mary Lattimoreは場所と強固に結びついた音楽を作っている。彼女のデビュー作『At the Dam』はジョシュア・ツリー国立公園(カリフォルニア)とマーファ(テキサス)の超自然的な砂漠…
得点:7.7筆者:Steven Arrovo Sen Morimotoの音楽は開かれた本である。私小説的で断片的な歌詞と、幾重にも重ねられたハーモニーが積み重なっていって彼の動的なジャズ・ラップが出来上がる。しかもそれは重たい本だーーもしかしたら、百科事典くらいに。子…
Sen Morimotoは京都生まれ、マサチューセッツ育ち、シカゴ在住のミュージシャン。最初にジャズとサックスを学んだ後ヒップホップに傾倒し、現在では作品のほぼ全てを自分の演奏で作り上げてしまうマルチ楽器奏者である(「ジャズ・ラッパー」という表記を主…
Auto by Wendy Eisenberg Wendy Eisenbergというギタリストの名前は数多くの文脈で出現するため、読者の中にもその中の一つによって知っているかもしれない。かの悪党ロック・バンド=Birthing Hips(2017年の名作『Urge to Merge』を残して解散)の中心をな…
Vari-Colored Songs: A Tribute to Langston Hughes by Leyla McCalla クラシックとフォークのソングライター/マルチ楽器奏者のLeyla McCallaはこの『Vari-Colored Songs』の楽曲を、ハーレム・ルネッサンスの巨人=Langston Hughesの作品の中から特に強力…
Phoenix: Flames Are Dew Upon My Skin by Eartheater Eartheater名義の作品の中で、Alex Drewchinは「変身」を重要視している。彼女の楽曲はクラシックの作曲、未来的なエフェクト、自然主義的なフォーク、クラブ・ミュージックのプロダクション、技巧派の…
Yogo Yogo by Penny Penny 『Yogo Yogo』はPenny Pennyの出世作であり、彼の南アフリカ随一の名士という地位を確立した。1996年に8日間という短さで録音されたこのダンス・レコードは、この国が比較的新しい政治的な自由を謳歌している中で制作された:アパ…
Nobody Lives Here Anymore by Cut Worms Max Clarkeに拍手を贈ろう。20世紀中盤の陳腐なポップ・バラードに根付いた音楽を、皮肉を込めてやるわけでもなく、NPRによって音楽の趣味が形成されたような人たちをめがけてやるわけでもなく、そういう音楽を作ろ…
Project:00 (プロジェクト00) by Cryostasium feat. MEIKO (メイコ) 2004年に発明されて以来、ボーカロイドはオートチューンのめちゃくちゃキュートないとことして機能してきた。これらのアニメアバターによる人工音声のボックスは、人間の歌唱の正確性と…
Nothing EP by Loraine James ロンドン生まれのプロデューサー=Loraine Jamesはプログレッシヴな電子音楽の世界において強力な新生である。彼女の最新EP『Nothing』は2019年のHyperdubからのデビュー作にして、想像力豊かなスタイルの融合を通じてクィアな…
Black Thoughtは1987年に結成されたヒップホップ・バンド=The Rootsのフロントマン。ドラマーのQuestloveが繰り出す極上のグルーヴに乗っかる彼のラップはそのたぐいまれなライミングのスキルや高度な比喩表現によるボースティングによって「ヒップホップ・…
HA Chu by Pan Amsterdam 2000年にニューヨークのジャズ・シーンにおける「期待の新人」と言われながらも、トランペッターのLeron Thomasはそれに反して悪評を刻み続けた。彼自身の考案である “other music” というスタイルーージャンルやコラボレーションの…
True Romantic by Ziemba 潜在意識の商業化に関するエッセイ ”Dream Kitsch” のなかで、ヴァルター・ベンヤミンは「夢の中で青い花(=ひらめきの元)を目にすることはないのである」と書いている。ロマン主義が資本主義に降伏していく様を見た彼の嘆きは、…
点数:6.9評者:Stephen Kearse The Rootsの長いキャリアの中でも最も鳥肌ものの瞬間の一つが、Black Thoughtのラップの筋肉をこれでもかと見せつける “75 Bars (Black's reconstruction)” である。彼の熱のある長いヴァースはあるで不時着のような衝撃で、…
Agüita by Gabriel Garzón-Montano Gabriel Garzón-Montanoがカテゴリの区分を否定するような音楽を作るのはこれが初めてではない。彼がこれまでに発表した2枚のアルバム『Bishouné: Alma del Huila』『Jardín』によって、彼はR&Bアーティストでありながら、…
UNTITLED (Rise) by SAULT イギリスの正体不明のコレクティヴ=SAULTは、昨年どこからともなく表れたかと思いきや、この12か月の間に誰にも止められない一大勢力となっている。この集団にかかわっているミュージシャンの正体は全くの不明であるが、それは重…
When I Die, Will I Get Better? by Svalbard ブリストルのSvalbardはこの過去8年の間、ブラック・メタルのメロディックな部分とハードコアのリズム的な破壊感を組み合わせるサウンドを鳴らしてきた:その特徴は美しさと暴虐さによって等しく定義され、抑圧…
HYPE NOSTALGIA by Rituals of Mine 2015年以来、Terra Lopezは感情的に上下の激しい時期を過ごしている。サンディエゴ出身のこのミュージシャンは父親と親友を6ヶ月の間に亡くし、その後に声をなくし、彼女のバンド=Sister Crayonの解散を乗り越えた。そう…
点数:8.7 [Best New Music] 筆者:Matthew Ismael Ruiz Jeff “Chairman” Maoによって行われた2010年のインタビューの中で、Jay Electronicaは自身にまつわる神秘的な雰囲気は混乱のもとであると認めた。「みんながなんでそんな事を言うのかわからない。俺は…
Renegade Breakdown by Marie Davidson & L’Œil Nu 批評的に成功した2018年の『Working Class Woman』に続いて発表した新作『Renegade Breakdown』のタイトル・トラック冒頭でMarie Davidsonはある宣言を行う。「ところで、今回のアルバムには金儲けになるも…
得点:7.6 筆者:Gabriel Szatan 聴いている人たちに打ち勝つよう語りかけ続けた、その闘いに遂にチェスター・ベニントン自身が負けてしまったのは、彼が41歳の時だった。Linkin Parkの音楽を形作る特徴とは、トラウマと向き合っていくための手段をリスナー…
Transmissions: The Music of Beverly Glenn-Copeland by Beverly Glenn-Copeland Beverly Glenn-Copelandの音楽は美しさ、憐み、そして変化というのはいつだって可能であるという信念によって輝いている。彼がたどった道筋は極めて特異である――1970年代にジ…
No era sólida by Lucrecia Dalt コロンビア出身でベルリンで活動するサウンド・アーティスト=Lucrecia Daltがブルックリンのレーベル=RVNG Int'lからの2作目としてリリースしたこのアルバムは何かを解き明かし、そして改める事についての作品である。Dalt…
Shimmer, Then Disappear by Wylie Cable Wylie Cableの8枚目となるアルバム『Shimmer, The Disappear』のライナー・ノートには影響源を付した長いリストが書かれている――その中にはダウンテンポ、ドラムンベース、IDM、ミュージック・コンクレート、そして…
Under by Dyani デトロイトを拠点とするプロデューサーDyaniはそのデビュー・フル・アルバム『Under』において、個人的な癒やし、再生、そして希望に満ちた想像といったコンセプトを、スピリチュアルな浄化において古くから用いられてきた水というモチーフを…
「AREA」を飛び越えた連帯 BLACKPINK IN YOUR AREA. ラッパーが使う「〇〇 in da place to be」「〇〇 in tha house」「〇〇 in tha building」など、「ここに来たぞ!」という意味合いの煽り文句は数多くあるが、韓国の女性4人組グループ・BLACKPINKが用い…
Pathways & Passages by Cosmic Vibrations ft. Dwight Trible シンガー=Dwight Tribleのの豊かでシアトリカルなバリトンはKamasi Washingtonのファンにはよく知られているところである。彼は2015年の『The Epic』とそれに続く2019年の『Heaven and Earth』…