海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

ロック

Weekly Music Review #70: グソクムズ『グソクムズ』

「ネオ街風」というキャッチコピーを聴いたとき、正直「またこれか」と思ってしまった。はっぴいえんど直系なんて、2021年に新しくは必要ない。そう思って聴き始めたけれど、想像していた音とは少し違った。ときに峯田和伸のような響きにも聞こえるボーカル…

Weekly Music Review #67: RADWIMPS『FOREVER DAZE』

RADWIMPSの「FOREVER DAZE」をApple Musicで FOREVER DAZE - Album by RADWIMPS | Spotify RADWIMPS特集の関ジャムを見た。この番組によるとRADWIMPSは「常に最先端」で「韻の踏み方がすごく」て「天才」なのだそうだ。なるほど、テレビって今こんな事になっ…

Weekly Music Review #65: Courtney Barnett『Things Take Time, Take Time』

コートニー・バーネットの「Things Take Time, Take Time」をApple Musicで Things Take Time, Take Time - Album by Courtney Barnett | Spotify うーん。フジロックで観たときはとにかく超カッコいいロッカー、というイメージだったのだけれどなあ。3作目…

Weekly Music Review #62: Parquet Courts "Sympathy for Life"

Parquet Courtsの「Sympathy for Life」をApple Musicで Sympathy for Life - Album by Parquet Courts | Spotify 今年日本で劇場公開されたデヴィッド・バーンのライヴ映画『アメリカン・ユートピア』が、音楽映画史に残る大大傑作であったことに異論を唱え…

<Pitchfork Sunday Review和訳>The Flying Burrito Brothers: The Gilded Palace of Sin

A&M • 1969 1960年代後半、ヒッピー嫌いのカントリー・ミュージック・ファンが多く訪れていたノース・ハリウッドのバー「パロミノ」で、グラム・パーソンズが初めてオープン・マイク・ナイトに出演したときのことだ。お気に入りのサテンのベルボトムを履き、…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Joan Armatrading: Joan Armatrading

A&M • 1976 ジョーン・アーマトレイディングは、自己の内面の神秘を感情のリズムに敏感に調和させ明瞭に描き出す。それは最もひどい絶望ですらなんとか耐えうるものに聞こえてくるほどだ。そして彼女はあなたにほほえみをもたらすだろう。アーマトレイディン…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Lync: These Are Not Fall Colors

K RECORDS • 1994 Lyncが活動していたのはたったの2年間であり、それは長い歴史に一瞬だけ現れた点のようなものである。1992年の暮れから1994年の間の短い活動の間に、ワシントン州オリンピアの3人組は4枚の7インチと、3つのコンピ盤参加曲、そして唯一のLP…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Nina Hagen: Nunsexmonkrock

CBS • 1982 ニーナ・ハーゲンはドイツ出身で、オペラを歌い、パンク・ロック文化の発火点となった人物である。1980年にメジャー・レーベル契約を結びキャリアをスタートさせた彼女はヨーロッパで莫大な売上を記録し、多くのファンが彼女が演奏する空間を埋め…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Genesis: Duke

CHARISMA • 1980 1980年代、名声の有頂天にいたフィル・コリンズは、たくさんの、たくさんの批評家に向けて手紙を書くようになっていた。ドラマーからボーカルへと転向したジェネシスの一員として、そして一連のブロックバスター的ソロ作を通じて、彼ほどの…

<Bandcamp Album of the Day>XIXA, “Genesis”

Genesis by XIXA 初めて聴く人であっても、このトゥーソンを拠点とするロック・バンドであるXIXAがなぜ自分たちの音楽を「神秘的な砂漠のロック」と称しているのかを理解するのに掃除冠はかからないだろう。彼らの2作目となる『Genesis』の1曲目 “Thine Is t…

<Pitchfork Sunday Review和訳>A.R. Kane “69”

Rough Trade / 1988 1985年のある晩、The Cocteau Twinsが珍しくテレビに出演した。橙色の輝きに包まれながら、その年に発表された『Tiny Dynamine EP』に収録された “Pink Orange Red” を演奏していた彼らはどこか別の世界の住人のようなオーラを放出してい…

<Bandcamp Album of the Day>The Weather Station, “Ignorance”

Ignorance by The Weather Station 11年前、The Weather Stationとして初めての作品を発表してから、Tamara Lindemanは自身のサウンドの境界線を広げ続けてきた。2011年の『All of It Was Mine』のようなアルバムでは赤裸々にそぎ落とされたフォーク・ミュー…

<Bandcamp Album of the Day>Pearl Charles, “Magic Mirror”

Magic Mirror by Pearl Charles Pearl Charlesの2018年リリースのデビュー作『Sleepless Dreamer』は彼女の70年代カリフォルニア・カントリー・サウンドを自信たっぷりに確立したが、それに続くこの『Magic Mirror』において彼女ははっきりとポップな領域に…

Weekly Music Review #20: スカート『アナザー・ストーリー』

スカートの「アナザー・ストーリー」をApple Musicで アナザー・ストーリー - Album by スカート | Spotify 今年で活動開始10周年を迎えた澤部渡のソロ・プロジェクト=スカートが、現在所属しているカクバリズムに加入前に発表していた自主制作の音源『オー…

Weekly Music Review #13: Nothing『The Great Dismal』

Nothingの「The Great Dismal」をApple Musicで The Great Dismal - Album by Nothing | Spotify Nothingはフィラデルフィアで結成されたシューゲイズ〜ポスト・ハードコア・バンド。しかし中心人物のDominic "Nicky" Palermoが以前にやっていたバンド=Horr…

<Pitchfork和訳>Linkin Park: Hybrid Theory (20th Anniversary Edition)

得点:7.6 筆者:Gabriel Szatan 聴いている人たちに打ち勝つよう語りかけ続けた、その闘いに遂にチェスター・ベニントン自身が負けてしまったのは、彼が41歳の時だった。Linkin Parkの音楽を形作る特徴とは、トラウマと向き合っていくための手段をリスナー…

Weekly Music Review #8: MONOEYES『Between the Black and Gray』

「あの頃」聴いてた音楽に対するアンビバレントな気持ち 「はじめてちゃんと聴いたんだけど、あんなダサかったんだね(笑)」2019年のフジロック初日、宿に返ってから一緒に行った先輩と話していると、彼はそんな言葉を言い放った。言うまでもなく、ELLEGARDEN…

<Bandcamp Album of the Day>Throwing Muses, “Sun Racket”

Sun Racket by Throwing Muses Throwing Musesの駄作なんてものがあるだろうか?答えはノーだ。「カレッジ・ロック」という物事を単純化するジャンル名の中で最も輝かしくオリジナルなバンドとして40年以上のキャリアを誇るThrowing Musesが、彼らの魅力的な…

<Bandcamp Album of the Day>Bully, “SUGAREGG”

SUGAREGG by Bully 今年のはじめ、コロナウイルスの第1波によるロックダウンでBullyの次の作品のプロモーションやツアーの計画がストップしてしまった時間を埋めるために、Alicia Bognannoは楽器をすべて自分で演奏し、ミックスをリビングで終えたNirvanaの …

<Bandcamp Album of the Day>Dog Day, “Present”

Present by DOG DAY Seth SmithとNancy Urichはお互いを深く刺激し合っているクリエイティヴなカップルである。故郷であるハリファックス出身の最も愛されているインディー・ロック・バンドの一つ=Dog Dayを結成するだけではなく、二人はここ10年の間にホラ…

<Bandcamp Album of the Day>Hum, “Inlet”

Inlet by Hum 問題:バンドのディスコグラフィーの中で傑作とされている再結成アルバムはどれだろう?オリジナル・メンバーによるDinasour Jr.が2008年の『Beyond』でそれを成し遂げている。80年代後期におけるほろ苦い終焉を考えると驚くべき帰還であった。…

<Bandcamp Album of the Day>Built to Spill, “Built To Spill Plays The Songs Of Daniel Johnston”

Built To Spill Plays The Songs Of Daniel Johnston by Built To Spill ソングライターである故・Daniel Johnstonの類まれなる才能の一つは、人間の小さな喜び、そして押しつぶされそうになるほどの憂鬱を繊細かつはっきりと表現することができる能力だった…

<Bandcamp Album Of The Day>Jackie Lynn, “Jacqueline”

Jacqueline by Jackie Lynn Jackie Lynnという名前に馴染みながないのであれば、彼女がすでにスターであると思いこんでしまっても仕方がない。彼女の最新作『Jacqueline』で見せてくれる、彼女の自信たっぷりでこの世のすべてを見てきたかのようなトーチ・シ…

<Bandcamp Album Of The Day>Snarls, “Burst”

Burst by snarls オハイオ州コロンバスにはいくつかの自慢の種がある―州都であり、大学フットボールのメッカであり、ファストフード・チェーンの試験場でもある―が、オハイオ州のもつロックンロールの業績は申し分ない一方、この州で最大の都市であるコロン…

<Bandcamp Album Of The Day>Sarah Harmer, “Are You Gone”

sarahharmer.bandcamp.com 10年以上前にアルバムをリリースして以来、オンタリオのシンガー・ソングライター、Sarah Harmerは環境保護のための活動に専念してきた。ナイアガラの滝を保護するためのPERL(Protecting Escarpment Rural Land=急斜面の地域の保…