海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

<Pitchfork Sunday Review和訳>Sparks: No.1 in Heaven

ELEKTRA • 1979 パンクは70年代のロック・エスタブリッシュメント層を揺さぶったが、ディスコはさらにその先を行った。安全ピンや皮肉な鉤十字は、ワンピースのジャンプスーツやブギー・シューズを前に太刀打ちなどできなかった。1979年7月12日、シカゴで開…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Fugees: The Score

COLUMBIA • 1996 1994年の夏、Fugeesは契約を切られる瀬戸際にいた。このニュージャージーのヒップホップ・トリオによるデビューLP『Blunted on Reality』はKool and the Gangのカリス・ベイヤンがプロデュースを務めたのだが、当時人気だったアグレッシヴな…

<Pitchfork Sunday Review和訳>The Flying Burrito Brothers: The Gilded Palace of Sin

A&M • 1969 1960年代後半、ヒッピー嫌いのカントリー・ミュージック・ファンが多く訪れていたノース・ハリウッドのバー「パロミノ」で、グラム・パーソンズが初めてオープン・マイク・ナイトに出演したときのことだ。お気に入りのサテンのベルボトムを履き、…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Joan Armatrading: Joan Armatrading

A&M • 1976 ジョーン・アーマトレイディングは、自己の内面の神秘を感情のリズムに敏感に調和させ明瞭に描き出す。それは最もひどい絶望ですらなんとか耐えうるものに聞こえてくるほどだ。そして彼女はあなたにほほえみをもたらすだろう。アーマトレイディン…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Sonny Sharrock: Ask the Ages

AXIOM • 1991 ソニー・シャーロックはギターを弾きたいと思ったことがなかった。彼は初めてその楽器を手にしたときそれを嫌いさえした。1960年、彼が20歳のころである。そして彼は自身の表現の可能性を急激に広げ、自分のヴィジョンに合うように作り直し、さ…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Speaker Knockerz: Married to the Money II #MTTM2

TALIBANDZ ENTERTAINMENT • 2014 サウス・カロライナ州コロンビアに住むデレク・マカリスター・Jr.は16歳でお金がなく、ほかのティーンエイジャーたちと同じように、遊ぶお金が欲しいと思っていた。彼はファストフード・チェーンのZaxbysの仕事に応募してい…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Lync: These Are Not Fall Colors

K RECORDS • 1994 Lyncが活動していたのはたったの2年間であり、それは長い歴史に一瞬だけ現れた点のようなものである。1992年の暮れから1994年の間の短い活動の間に、ワシントン州オリンピアの3人組は4枚の7インチと、3つのコンピ盤参加曲、そして唯一のLP…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Joyce Manor: Joyce Manor

6131 • 2011 ソーカル(カリフォルニア南部)のポップ・パンクを約半世紀にわたって保ち続けてきた、地下室やボーリング場のビールにまみれたエコシステムの中から、ジョイス・マナーは出現した。しかしバリー・ジョンソンは、パンクの流行のテイストを担う…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Alicia Keys: Songs in A Minor

J • 2001 1998年の夏、アリシア・キーズはすでに彼女のデビュー作『Songs in A Minor』をほぼ完成させていた。しかし彼女が所属するコロンビア・レコードは違う方向性を目指したほうがいいと告げた。そう、彼女はクラシックの教育を受けたピアニストであり、…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Anita Baker: Rapture

ELEKTRA • 1986 「クワイエット・ストーム」とは、70年代末期に、小石のようにすべすべとしたR&Bのバラ―ドに対して名付けられたブラック・ラジオ用語である。サブジャンルの名前がそれ自体に最適な文脈を示唆する形で名付けられることは珍しいことだ。アイズ…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Nina Hagen: Nunsexmonkrock

CBS • 1982 ニーナ・ハーゲンはドイツ出身で、オペラを歌い、パンク・ロック文化の発火点となった人物である。1980年にメジャー・レーベル契約を結びキャリアをスタートさせた彼女はヨーロッパで莫大な売上を記録し、多くのファンが彼女が演奏する空間を埋め…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Yellow Magic Orchestra: BGM

ALFA・1981 日本式のアクロニムで、「BGM」とは「バックグラウンド・ミュージック」を意味する。それはYellow Magic Orchestraの細野晴臣の80年代の至福のアンビエント作品を想起させる。どこか牧歌的で、ヒップでマスマーケット的な衣料店から流れてくるよ…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Genesis: Duke

CHARISMA • 1980 1980年代、名声の有頂天にいたフィル・コリンズは、たくさんの、たくさんの批評家に向けて手紙を書くようになっていた。ドラマーからボーカルへと転向したジェネシスの一員として、そして一連のブロックバスター的ソロ作を通じて、彼ほどの…

<Bandcamp Album of the Day>arious Artists, “J Jazz Volume 3: Deep Modern Jazz from Japan”

J Jazz Volume 3: Deep Modern Jazz from Japan by BBE ジャズ熱愛家のTony HigginsとMikee Pedenによって編纂された、BBEの『J Jazz: Deep Modern Jazz From Japan』は、引き続き日本の豊かなジャズの歴史を熱心に紹介してくれている。シリーズ3作目となる…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Katy Parry: Teenage Dream

Capitol / 2010 勝負の時が来たならば、その時が勝負のときである:『Teenage Dream』は終わることのないサマー・バケイションを約束してくれる。それは仮死状態の中で生きていて、常に週末を楽しみにしていて、決して仕事に出かけることなどない。ケイティ…

<Bandcamp Album of the Day>Jimmy Edgar, “Cheetah Bend”

CHEETAH BEND by JIMMY EDGAR Jimmy Edgarは常に予測不可能なアーティストである。このデトロイト出身の天才児は、多くのエレクトロニック・ミュージックのサブジャンルや多様なコラボレーターの間を行ったり来たりしながら、自身の創作の行く先が向くままに…

<Bandcamp Album of the Day>Nightshift, “Zöe”

Zöe by Nightshift Nightshiftの『Zöe』を聴けば、自分のレコードコレクションを整理したいという気持ちになるだろう。しかし30分後、あなたは引っ張り出したアルバムを全く整頓できないまま、レコードに囲まれて座っているだろう。これは過剰に自意識が強か…

<Bandcamp Album of the Day>Bunny Scott, “To Love Somebody”

To Love Somebody by Bunny Scott ジャマイカのキングストンにあるLee "Scratch" PerryのBlack Ark Studios――Bob Marley and The WailersやJunior Murvin、Max Romeo、The Congos、The Heptonesなどをもてなしたのと同じホール――で制作されたBunny Scottの『…

<Bandcamp Album of the Day>Senyawa, “Alkisah”

Alkisah by Senyawa Wukier Suryadiの自作楽器とRully Shabaraの多彩な声が特徴のインドネシアの二人組Senyawaは、ジャワのフォーク音楽――古代のメロディ、秘術的なリズム、弓でかき鳴らされる弦楽器――と即興演奏、過激なヴォーカルのスタイル、ヘヴィな雰囲…

<Bandcamp Album of the Day>Ivo Perelman and Nate Wooley, “Polarity”

Polarity by Ivo Perelman/Nate Wooley テナー・サックス奏者=Ivo Perelmanとトランペッター=Nate Wooleyが共作した『Polarity』は二重即興奏の可能性を探求する1枚である。これまでに、WooleyはAnthony Braxton、John Zorn、Ingrid Larubrockといった面々…

<Bandcamp Album of the Day>XIXA, “Genesis”

Genesis by XIXA 初めて聴く人であっても、このトゥーソンを拠点とするロック・バンドであるXIXAがなぜ自分たちの音楽を「神秘的な砂漠のロック」と称しているのかを理解するのに掃除冠はかからないだろう。彼らの2作目となる『Genesis』の1曲目 “Thine Is t…

<Bandcamp Album of the Day>Kizis, “Tidibàbide / Turn”

Tidibàbide / Turn by Kìzis Kizisが『Tidibàbide / Turn』でコラボレートしたアーティストは膨大な数である。多岐にわたる、3時間半の大作の中で、Kizisーー以前はMich Cotaとして活動していた、アルゴンキン語族の「Two-Spirit(先住民の“第三の性”)」の…

<Pitchfork Sunday Review和訳>A.R. Kane “69”

Rough Trade / 1988 1985年のある晩、The Cocteau Twinsが珍しくテレビに出演した。橙色の輝きに包まれながら、その年に発表された『Tiny Dynamine EP』に収録された “Pink Orange Red” を演奏していた彼らはどこか別の世界の住人のようなオーラを放出してい…

<Bandcamp Album of the Day>Sun Kin, “After the House”

After the House by Sun Kin ロサンゼルスを拠点とするエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー=Kabir Kumarが作る音楽はどこか儚さを感じさせる。常にベッドルーム・ポップやサイケデリック・フォーク、ディスコ、ハウスと言ったジャンルを横断し…

<Bandcamp Album of the Day>Aaron Lee Tasjan, “Tasjan! Tasjan! Tasjan!”

Tasjan! Tasjan! Tasjan! by Aaron Lee Tasjan セルフタイトルのアルバムには二種類ある。第一に、デビュー作というのがよくある(「自己紹介させてください」というようなもの)。第二にそれとはまったく異なり、もう一度自己紹介をするための手動リセット…

<Pitchfork Sunday Review和訳>Sylvester: Step II

Fantasy / 1978 1986年の大晦日、シルヴェスターは「The Late Show With Joan Rivers」にそびえ立つように高く、オレンジのシャーベット用な色をしたウィッグに、装飾が施されたパンツスーツという姿で登場した。彼の出世作となったシングル、ミラーボール・…

<Bandcamp Album of the Day>Slowthai, “TYRON”

TYRON by slowthai 自身のデビュー作『Nothing Great About Britain』において、ノーサンプトンのラッパー=Slowthaiはネグレクトされてきた世代の怒りを無秩序でパンクに影響されたヒップホップへと昇華させた。このアルバムはSlowthaiの貧しい労働階級の出…

<Bandcamp Album of the Day>The Weather Station, “Ignorance”

Ignorance by The Weather Station 11年前、The Weather Stationとして初めての作品を発表してから、Tamara Lindemanは自身のサウンドの境界線を広げ続けてきた。2011年の『All of It Was Mine』のようなアルバムでは赤裸々にそぎ落とされたフォーク・ミュー…

<Bandcamp Album of the Day>Maria BC, “Devil’s Rain”

Devil's Rain by maria bc Maria BCが自身のデビューEP『Devil's Rain』を録音したのは、ロックダウン中に感じたアパートでの孤独からだった。その声を優しいささやきにとどめ、甘美なギターのループと柔らかいオペラ風の音楽の上で、そして孤独な生活の制限…

<Bandcamp Album of the Day>Tele Novella, “Merlynn Belle”

Merlynn Belle by Tele Novella 「どこへいってしまったの/その行方を誰も知らない」テキサスのサイケ・ポップ・バンド、Tele Novellaの2作目となる『Merlynn Belle』の幕開けで、Natalie Ribbonsはこう歌う。爪弾かれるフラメンコ風のギターとぜんまい仕掛…