海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Cryostasium feat. MEIKO (メイコ), “Project:00”

2004年に発明されて以来、ボーカロイドはオートチューンのめちゃくちゃキュートないとことして機能してきた。これらのアニメアバターによる人工音声のボックスは、人間の歌唱の正確性という意味でT-Painと昔のカシオのクワイア・パッチの間のどこかに位置しているーーこれらは完璧な音程やビブラートを聞かせることができるが、どこか不自然出るという点で。今回新たにリイシューされるCryostasium(と人気ボーカロイドMEIKO)によるEP『Project:00』のようにボーカロイドの不気味な怖さを追求した作品は多くはない。

それはパロディにうってつけのコンセプトであったーーインダストリアルな風味を持つブラック・メタル・バンドが人工的なアニメ少女とダッグを組むなんて、面白さが保証されている。しかしこれはよくあるウケ狙いの突発的な作品ではない。Cody Mailletの実験の場であるCryostasiumは、2016年にこの作品をリリースした頃にはすでに15年もの間、強固になっていく一方であったメタルというジャンルの境界線に挑戦し続けてきたバンドであった。そして同じような指向のミームマッシュアップとは違い、Mailletはボーカロイドが持つ能力のすべてを十二分に、そして封して用いることで、このプロジェクトに奇妙にマッチした音色を作り出している。

1曲目の “Inebriate” はこのコンセプトの持つバイタリティを100%発揮しているーーほぼ自然に聞こえる人工音声の不協和音が、ボーカロイドのもつ不気味の谷的なポテンシャルの現実的な可能性を探求している。一方で、“Downward” や “Mutagen” といった曲ではMEIKOの非現実的な声域が声というよりはテルミンのような音色を奏で、気だるそうなブラストビートとディストーションの靄の中を突き抜けていく。

恐ろしいほどにゴシックでマイナー調の作曲と積み重ねられていくようなエフェクトは瞬時にカタルシスをもたらし、同時に深く我々を動揺させる:これはアルゴリズムが叫んで出す想像しがたいサウンドなのか、それとも我々が長い間警告され続けてきた、AI主導によるアポカリプスなのか。

By Max Cohen · October 08, 2020

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