海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Quakers, “Quakers II: The Next Wave”

1988年のMarley Marl『In Control Vol. 1』のリリース以来、プロデューサー主導のコンピレーションはラップ・ミュージックの風景に欠かせないものとなった。プロデューサーが自身のシグネイチャー・サウンドを披露し、才能あるMCたちが名を連ねる。この伝統を拡張しながら、Quakersの最新リリース『Quakers II: The Next Wave』ではシーンの中でベストのMCたちが、33もの性急でコラージュのようなビートの上を走り抜けている。

QuakersはSupa K、7STU7、Fuzzface(PortisheadBEAK>のGeoff Barrow)の3人のプロデューサーからなる。この3人はアルバム全編を通して奇妙でエキサイティングな音的環境を作り上げ、ゲスト・ボーカリストに楽しんでもらっている。簡潔ながらもドラマティックなイントロのあと、このアルバムはうす暗いギターとベースが駆動するサンプルが使用された “Start It Like This” (デトロイトのベテラン・スピッター=Phat Katが参加)で地面を走り始める。Guilty Simpsonがすぐさま “One Of a Kind” で続き、落ち着き払いながらも威嚇するようなラインを、バチッと決まったドラム・ブレイクと耳を刺すようなヒッチコックサウンドトラック風のヴァイオリンがあしらわれたトラックに乗せていく。『Viva! La Woman』時代のCibo Mattoを思わせる埃っぽいビートとキャッチーなフックをもつ、楽しくゆるい雰囲気の “Approach With Caution” ではSampa The Greatが登場する。その他にもSageInfinite、Bob Banner、Jeremiah Jae、Jeru The Damaja、その他大勢が参加しているこの『Quakers II: The Next Wave』はリリカルな才能で満ち溢れていて、Quakersはそんなメンツにふさわしく想像力に富んだインストゥルメンタルで迎え撃っている。

By John Morrison · November 03, 2020

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