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<Bandcamp Album of the Day>Gabriel Garzón-Montano, “Agüita”

Gabriel Garzón-Montanoがカテゴリの区分を否定するような音楽を作るのはこれが初めてではない。彼がこれまでに発表した2枚のアルバム『Bishouné: Alma del Huila』『Jardín』によって、彼はR&Bアーティストでありながら、クンビア、ヒップホップ、そしてフランスのクラシック音楽など彼が人生の中で受けてきた音楽的な影響を大胆に自身の楽曲に統合するアーティストとして地位を確立した。これらの影響によって彼は独自のシネマティックなサウンドを作り出し、それはGarzón-Montanoが自身の声のもつ脆弱さとやさしさ、そして歌詞を披露するための道具となった。彼の最新作『Agüita』はGarzón-Montanoの新しく、遊び心豊かで、実験的な側面に光が当たっている:一見不調和音のように聞こえるクラシカルなピアノのメロディやストリングスが、ダンスフロアに火をつけるようなラテン・トラップやレゲトン風味のバンガーへと連なっていく。音のコントラストがあらゆる場所で際立っているこの作品を必聴のものにしているのは、Garzón-Montanoのソウルフルなアプローチである。

アルバムの幕を開けるのは “Tombs” である。不吉なピアノとヘタウマなマリンバがGarzón-Montanoのノスタルジックで耳障りな歌唱を引き立てている。ある関係の死についてうたうこの “Tombs” は徐々に盛り上がっていき、ヴァイオリンやストリングス、そして泣き叫ぶようなエレクトリック・ギターによって、我々にその混乱を経験するように仕向けられる。不協和音、クラシカルなストリングスやピアノが作品全体で鳴り響き、Garzón-Montanoが喪失や悲しみ、そして自然のサイクルの終焉といった感覚を探求するためのエモーションのローラーコスタ―を作っている。このアルバムのワイルドカードは “Muñeca”、 “Mira My Look”、そしてタイトル・トラックの  “Agüita” だ。これらの3曲はGarzón-Montanoをラテン・トラップやレゲトンの領域へと踏み込ませていて、彼のソウルフルな音色はラフで強勢が置かれたライミングに置き換えられている。作品中でスペイン語を用いるのは初めてであり、それによってGarzón-Montanoは『Agüita』のために作り上げたメランコリックでファンタジックな世界から我々を連れ出し、我々が故郷と呼ぶ雑然とした都市の風景へとつき戻している。

By Amaya Garcia · October 02, 2020

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