<Bandcamp Album of the Day>Cosmic Vibrations ft. Dwight Trible, “Pathways & Passages”
シンガー=Dwight Tribleのの豊かでシアトリカルなバリトンはKamasi Washingtonのファンにはよく知られているところである。彼は2015年の『The Epic』とそれに続く2019年の『Heaven and Earth』に参加している。Tribleは何十年もの間LAジャズシーンに定着している人物である。亡くなってしまったピアニストであるHoarce TapscottのPan-Afrikan People's Arkestraに参加するほか、ロサンゼルスのパフォーマンス・ステージ=World Stageを経営し、そこではWashingtonやThe West Coast Get Downのメンバーがそのキャリアをスタートさせた。彼はスピリチュアル・ジャズ、ブルース、ファンク、ソウルを混ぜ合わせたスタイルで自身の名義やグループ=Build An Arkの両方で広範な作品を残している。
Cosmic VibrationsはTribleの新しいバンドであり、そのデビュー作『Pathways and Passages』は彼のヴォーカルをフィーチャーしているが、この作品は濃密で瞑想へといざなうようなグルーヴや複雑に折り重ねられたパーカッションにも等しく焦点を当てている。ラインナップにはリード楽器と木管楽器奏者であるPablo Calogero、アップライト・ベース奏者であるJohn B. Williams、コンガとパーカッション、フルートを担当するDerf Reklaw、ドラム、パーカッション、ループを担当するBreeze Smith、そして土着の打楽器を担当するChristopher Garciaといった面々が揃えられた。
このグループのサウンドは大抵の「スピリチュアル・ジャズ」と比べると格段にダークで、より大きな苦悩が立ち込めているような印象だ。フォーク・シンガーのRichie Havensで有名な ”Motherless Child” も彼らの手にかかれば苦悶の嘆きとなる。Triblesはずっと歌詞を歌っているわけではない。1曲目の ”Nature's Vision” と特に ”OLBAP” では、パーカッションやカリンバがゴロゴロと鳴らされ彼の周りを動き回り、サックスが暗闇の中から叫び声を上げる中、彼は言葉にならない音節の連なりを吐き出したり、オーバーダブされた声によって影に追いやられたりする。これは至福の音楽ではない。これは獰猛で濃密なアルバムで、世界から暗闇を追い出すために行われる儀式なのである。
By Philip Freeman · September 21, 2020