海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

Pitchfork和訳

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part13: 80位〜71位

Part 12: 90位〜81位 80. Aphex Twin: Syro (2014) 『Syro』という作品は、自分がそもそも何故エレクトロニック・ミュージックと恋に落ちたのか思い出したいときに立ち戻ってくる作品である。この作品を楽しむということは、完璧に遂行された作曲の基礎を心…

<Pitchfork Sunday Review和訳>The KLF: Chill Out

KLF Communications, 1990By: Philip Sherburne, February 16, 2020 8.9 KLFによるサンプルを多用したドリームスケープ、アンビエント・ハウス・ミュージックにおいて最も影響力を持つ作品の一つ 1959年、James Tennyという名の若い作曲家が、先進的な考えを…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 12: 90位〜81位

Part 11: 100位〜91位 90. Joyce Manor: Never Hungover Again (2014) 3枚めとなるこのアルバムで、カリフォルニアのポップ・パンク・バンドJoyce Manorは持ち味のヒリヒリするようでふわふわとしたサウンドを蒸留し、パワーとメロディの極めて自然な一陣の…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 25: 80位〜76位

Part 24: 85位〜81位 80. Blood Orange: “You’re Not Good Enough” (2013) www.youtube.com アーティストが音楽を自分のセラピーであると語るのはクリシェであるが、Dev Hynesは我々なら患者と医者の間の秘密にしておくようなことを本当に音楽の中でシェアし…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 24: 85位〜81位

Part 23: 90位〜86位 85. Charli XCX: “Track 10” (2017) www.youtube.com Charli XCXは「聴くSF」である。愉快なほどにロボット風で、風変わりなほどに宇宙的な彼女は2017年のミックステープ『Pop 2』で自分が何処へ向かっているのか、そして何処を目指すこ…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 11: 100位〜91位

Part 10: 110位〜101位 100. Ariana Grande: Sweetener (2018) 一時、Ariana Grandeのキャリアは暗闇に飲み込まれてしまうのではないかと思われた。2017年、マンチェスターでの彼女のコンサートでは自爆テロで22人が亡くなった。そこにいた人達であれば、そ…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 23: 90位〜86位

Part 22: 95位〜91位 90. Blawan: “Why They Hide Their Bodies Under My Garage?” (2012) www.youtube.com Blawan“Why They Hide Their Bodies Under My Garage?”はもしかするとこの10年で最も快活で意地悪い楽曲かもしれない。暴れまわる狂牛のように疾走…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 22: 95位〜91位

Part 21: 100位〜96位 95. Rihanna: “Bitch Better Have My Money” (2015) www.youtube.com このミュージック・ヴィデオは、そのラディカルな重要性の解説と並んで、多くのショッキングな批判を受けることになった。その中で、Rihannaはたいていの場合は男性…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 10: 110位〜101位

Part 9: 120位〜111位 110. Waka Flocka Flame: Flockaveli (2010) 銃声を模した合いの手や過激にエスカレートしていくシンセを聴くと、このWaka Flocka Flameのデビュー作は未だに爆発的なサウンドに思える。後知恵で考えれば、このアルバムがいかにオーセ…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 21: 100位〜96位

Part 20: 105位〜101位 100. Jamie xx: “I Know There’s Gonna Be (Good Times)” [ft. Young Thug and Popcaan] (2015) www.youtube.com 囁くようなインディー・ロック・トリオ、The xxのシャイなプロデューサーが、ものすごいパーティーを開くこともできる…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 9: 120位〜111位

Part 8: 130位〜121位 120. Tyler, the Creator: Flower Boy (2017) 『Flower Boy』を通じて、Tyler, the Creatorは男性の恋人との過ぎ去りしロマンスの物語を回想しているように見える。その奇跡のような繋がりは“Glitter”で始まり、切なげな“See You Again…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 20: 105位〜101位

Part 19: 110位〜106位 105. Kendrick Lamar: “DNA.” (2017) www.youtube.com 韻を踏んでいる歌詞をつなげるだけではなく、それらに主題を託し、大きなアイデアをマントラの形に落とし込むような枠組みをつくりあげることは、真のラッパーであるかどうかを試…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 8: 130位〜121位

Part 7: 140位〜131位 130. Tame Impala: Lonerism (2012) 本質的には『Lonerism』とは、常にアウトサイダーのような気分であることの意味についての、神経質で深く内省に潜ったアルバムである。それが多くのフォロワーを生み、Tame Impalaをメインストリー…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 19: 110位〜106位

Part 18: 115位〜111位 110. Chairlift: “I Belong in Your Arms” (2012) www.youtube.com ブルックリンのシンセポップの審美家、Chairliftは2016年の解散に至るまで、密かに影響のあるアクトだった。ブログ時代のColumbiaのレーベルメイトであるPassion Pit…

<Pitchfork Sunday Review和訳>My Chemical Romance: Three Cheers for Sweet Revenge

つまはじかれた者たちのアイコンとなった、オペラティック・ポップ・ロックの巨塔 ドナとドナルドのウェイ夫妻は、犯罪組織やギャングの裁判でニュース番組によく取り上げられているニュージャージーの郊外、小さく陰気なベレヴィル郡の中でもとりわけ寂れた…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 7: 140位〜131位

Part 6: 150位〜141位 140. Parquet Courts: Sunbathing Animal (2014) ポップが主流となり、インディー・ロックにとってはこの上なく居心地のよかったこの時代において、Parquet Courtsは時代に取り残されることを選んだ。愉快でファニーな2012年の出世作『…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 18: 115位〜111位

Part 17: 120位〜116位 115. The Weeknd: “The Morning” (2011) www.youtube.com これはポップ版『アメリカン・サイコ』―退廃的なもの全てと、我々の時代における胸糞悪いことを少し足してできた作品―である。そしてこれはThe Weekend、R&B界のダークナイト…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 6: 150位〜141位

Part 5: 160位〜151位 150. Playboi Carti: Playboi Carti (2017) このセルフ・タイトルのミックステープによって出現する前、Playboi Cartiはなぞの人物だった:アトランタ・ネイティヴの彼のサウンドクラウドのページは公開された秘密の隠れ家であり、門番…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 17: 120位〜116位

Part 16: 125位〜121位 120. Justin Bieber: “Sorry” (2015) www.youtube.com “Sorry”という曲は実に奇妙な怪物である。Shabba Ranks風のカリビアン・フュージョンのビートの上に、上品に切り取られたポップなメロディを移植することで、SkrillexとBloodPop…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 16: 125位〜121位

Part 15: 130位〜126位 125. Lykke Li: “I Follow Rivers” (2011) www.youtube.com Lykke Liはかつて、“I Follow Rivers”を書き上げたきっかけとなった圧倒的な欲望を「自然の力」になぞらえた。相手の思惑のなすがままになった末に「声を失ったみたいに」感…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 5: 160位〜151位

Part 4: 170位〜161位 160. Noname: Room 25 (2018) Nonameはかつて自身の柔らかな音色と落ち着いた調子をさして、「ララバイ・ラップ」であると言い逃れをしたことがある。それは素晴らしいツイートだったが、ララバイは連署に値しなかった。『Room 25』は…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 15: 130位〜126位

Part 14: 135位〜131位 130. A$AP Rocky: “Peso” (2011) www.youtube.com “I be that pretty motherfucker”。この10年のラップ・ソングの中で、この5つの単語ほどすぐさまアイコニックになったフレーズで幕を開ける曲があっただろうか?“Peso”がブレイクした…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 4: 170位〜161位

Part 3: 180位〜171位 170. Skee Mask: Compro (2018) 表面上、このBrian MüllerのSkee Maskとしての出世作は、Aphex Twin風に燃え盛るようなドラムパターンをゴージャスなアンビエントと融合させる試みに見える。しかし何度も聞いているうちに、この『Compr…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 14: 135位〜131位

Part 13: 140位〜136位 135. Robyn: “Honey” (2018) www.youtube.com “Honey”はRobynの楽曲の中でも淫らな部類の一つである。脈打つハウス・ビートにセットされた、午前3時のブーティー・コール。この曲はゆっくりと流れ、ガタガタ鳴るハイハットとストロボ…

<Pitchfork Review 和訳>Kanye West: Jesus Is King

7.2 キリスト教信仰はカニエのゴスペル・アルバムにおいて揺らぐことのない焦点である。これはある男の神(そして自分自身)に対する愛についての、豊かにプロデュースされていながらも欠点だらけのアルバムである 1964年、ミシシッピ州ロングデールのある田…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 13: 140位〜136位

Part 12: 145位〜141位 140. Rae Sremmurd: “No Type” (2014) www.youtube.com 2014年、Rae Sremmurdは当時スーパープロデューサーとしての頂点を極めていたMike WiLL Made-Itに後押しされ、あの伝染力の高い“No Flex Zone”でスポットライトを浴びた。多くの…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 12: 145位〜141位

Part 11: 150位〜146位 145. Charli XCX: “Gone” [ft. Christine and the Queens] (2019) www.youtube.com ほぼ10年もの間、朝5時までパーティーしているようなレイヴ好きのクラブっ子というブランディングをしてきたCharli XCXだが、そのイメージにもヒビが…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・アルバム200 Part 3: 180位〜171位

Part 2: 190位〜181位 180. Chvrches: The Bones of What You Believe (2013) 理論上、そんなことはうまく行くはずもなかった。気難しく、猫背で歩くようなグラスゴーのポスト・ロック・バンドの中年元メンバー2人が、第3世代のエモを聴いて育った若いシンガ…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 11: 150位〜146位

Part 10: 155位〜151位 150. Nicki Minaj: “Beez in the Trap” [ft. 2 Chainz] (2012) www.youtube.com 2012年、Nicki Minajはラップ/ポップ/クレディビリティにまつわる論争の中心にあった。その年の6月に行われたニューヨークのラップ・ラジオ局Hot 97主…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 10: 155位〜151位

Part 9: 160位〜156位 155. Kanye West: “Blood on the Leaves” (2013) www.youtube.com “Blood on the Leaves”はこの10年でKanyeを偉大に、そして同時に惨めにもしたものの縮図である。彼があまりにも何かを美しく成し遂げるものだから、我々は彼が下手にや…