Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 27: 70位〜66位
70. Beach House: “Zebra” (2010)
Beach HouseのシンガーVictoria LegrandはバンドメンバーのAlex Scallyによるインストのデモを聴いて、その振り子のようなリフとドラマティックなクラッシュ・シンバルにシマウマを思った。最近彼女はKEXPに語った。「それが私に見えたものだった。横切っている模様こそが」そうして彼女はこの縞模様の動物が、その模様によって異化しつつ同時にカモフラージュされながら、馬に混じって走っていることについての曲を書いた。この曲はBeach Houseの3作目『Teen Dream』のリード・トラックとなり、このアルバムはこのデュオにとって転機となった。表面上、この“Zebra”はなにかの企みについての曲に聞こえる―もしくはこれに続く失恋についてのアルバムの序奏曲として。しかしこの曲はまた何かより深いものに触れている:「横切っている模様」こそBeach Houseのサウンドに最もふさわしい説明かもしれない。テクスチャと感情、ScallyのストイックなギターとLegrandのソウルフルなヴォーカルによるコントラストの上にこの二人の音楽は成り立っているのだ。“Zebra”はこの二人の創作について、二人がどのようにして彼女たちの縞模様を用いて名状しがたい感情を捉えているのか、そしてどのようにしてこれほどなぞめいた存在であり続けてきたのかということについての表現なのである。–Stephen Deusner
69. Caribou: “Can’t Do Without You” (2014)
"Can't Do Without You "は、最初は比較的ストレートなラブソングのように聞こえる。その中では、CaribouのDan SnaithとサンプルされたMarvin Gayeがタイトルのフレーズを煮えたぎるようなニューディスコ・ビートの上で歌い、高揚感のあるバンガーへと膨らんでいく。しかし、これらの言葉に内在する甘美さは、その伝え方の閉所恐怖症的な性質によって最終的に窒息させられてしまう。これは確かに愛についての曲だが、強迫観念や共依存についての考察としても刺さり始める。だから曲が終わるころには、不完全な形でつながっている関係性の熱狂的な輝きに包まれているような感覚を拭い去ることができない。–Evan Minsker
68. FKA twigs: “Two Weeks” (2014)
“Two Weeks”の露骨に性的な歌詞の内容については広く知られているが(たとえば、「私の腿が離れているのはあなたが息を吸い込む準備ができた時のため」のように)、この曲が音楽的にどれほどオーガズム的であるかということはあまり語られてこなかった。ゆっくりと弧を描くスネア、こぼれた糖蜜のようなシンセ、水平線まで伸びていくヴォーカル―これらの引き延ばされたサウンドが緊張の糸として機能し、避けられない事態に向けて優しく身構えている。1分を過ぎたところではひび割れたむち打ちの音のような音さえ聞こえてくる。遂にドロップが訪れるとき(それは繰り返される)、Twigの声は深淵へと運ばれていく。彼女のクリトリス主義の歌詞には堪能すべき箇所が多くあるが、彼女の欲望と解放の物語を守護者たらしめているのは、主人公の口説きたい相手に対する渇望の浮き沈みをいかにこの楽曲が体現しているかという点なのだ。死と再生、それらがお互いを丸ごと飲み込んでしまうような。–Ruth Saxelby
67. Kacey Musgraves: “Slow Burn” (2018)
Loretta Lynnの性的奔放さから、Willie Nelsonが精神を拡張する植物を好んだことまで――過去のカントリー歌手の反抗の物語の糸を拾い上げることで、Kacey Msugravesの歌詞は挑戦的で開かれたものであった。その後ろに流れる音楽がトラディショナルなものであっても、だ。しかし3枚目となる『Golden Hour』で我々の耳を引いたのは編曲だった。その1曲目“Slow Burn”はその平穏なメロディと優しく爪弾かれるアコースティック・ギターも相まって、カントリーだけでなくLaurel Canyonのソフト・ロックをも想起させる。しかし中盤、ドラムのビートとベースラインが入ってきた後は今度はPortisheadの分光器を通したPasty Clineのような、トリップ・ホップの影を帯びはじめる。“Slow Burn”はジャンルのクロスオーヴァーと言うよりは結末が明かされていない旅であり、それはまるでMusgravesがこの曲を書くきっかけとなった砂漠でのアシッド・トリップのようだ。彼女はカントリーを見捨てるのではなく、その領域の限界を探り、拡大しようとしたのだ。–Shuja Haider
66. King Krule: “Out Getting Ribs” (2010)
Archy Marshallの出世作、“Out Getting Ribs”のDIY感あふれるヴィデオで、あの声があの体から出てくるのを聴くのは未だに少し衝撃的である。彼はこの映像を投稿したときまだ15歳だったが、その声変わりした歌声はまるでもう10歳年上の人のようだった――この年齢では典型的な単純な怒りの域を超えた、青年的な歌詞も然り。彼は2013年、King Kruleとしてのデビュー・アルバム『6 Feet Beneath the Moon』に収録するにあたって少しリヴァーヴを取り除き、ギターとベースの音をきれいにするなどブラッシュアップを施した。しかしこの粗雑で生々しく爽やかなオリジナル・ヴァージョンこそが至高である。–Matthew Strauss