Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 28: 65位〜61位
65. Drake: “Worst Behavior” (2013)
2013年、我々は“タフなドレイク”と出会った。『Nothing Was the Same』は彼の車高デビューパーティーで、“Worst Behavior”は彼のアンセムだった。若きドレイクが気まずそうに的を得た事を言おうとしていたのに対し、タフなドレイクは自らの過ちをロマンに仕立て上げ、「覚えてんのか?マザーファッカー!」と叫ぶ。世界で一番ストリーミングされるアーティストになる何年も前、“Worst Behavior”はドレイクがポップの中心にかけた殴り込みだった。見事にガタガタの、楕円形のビートで(DJ Dahiはかつて「マジで、間違いみたいなもん」と語った)。ドレイクは当時26歳だったが、“タフなドレイク”はそのうち脱ぎ捨てるコスチュームのように感じられた。しかしそれは単なる一つの段階ではなかった。6年後、ドレイクは未だに寛容なムードにはなっていない。まだ守りに入っていないし、おそらくこれからもそうだ(ずっと付き合い続けるということは実際には孤独になっていくことであると考えているのは彼だけではない)。すべてを手に入れた時、永遠に最悪な行動にとどまったままでいるのか?–Naomi Zeichner
64. Phoebe Bridgers: “Motion Sickness” (2017)
じわじわと評判が広まっていった Phoebe Bridgerのデビュー作『Stranger in the Alps』のハイライト、“Motion Sickness”の歌詞は中毒的な人間関係を称賛している。「あんなことをされてあなたなんか大嫌い/でも子供みたいにあなたが恋しい」ギターの残響と際立つリズムの上で彼女は優しく歌う。クライマックスで彼女はとりわけ破滅的なラインを歌う――「私が産まれた時あなたはバンドをやっていた」――最後の音節を野生の雄叫びのように伸ばしながら。その一節は今や、今年になってBridgerや他のミュージシャンたちがRyan Adamsによる虐待を訴えたニューヨーク・タイムズの記事と切っても切り離せないように感じられる。しかし、一人称視点の直截さや尾を引く疑問があるものの、この“Motion Sickness”は物語の始まりであり、終わりではない。動き続けるという誓いにも似た、着実なアドレナリンの高まりである。–Sam Sodomsky
63. Bobby Shmurda: “Hot N***a” (2014)
ニューヨークはなにかフレッシュなものを必要としていた。それは2014年、カリフォルニアのコンプトン出身のKendrick Lamarが曲の中で「King of New York」を宣言してから1年も経っていなかったころだった。そんな中、3月にBobby Shmurdaは“Hot N***a”のミュージック・ヴィデオをYouTubeにアップした。最初はニューヨークのストリートラップ・ヒットだった:やがてBobbyのブルックリンならではの無骨な大胆さとJahlil Beatsによるブーンと鳴るようなプロダクションに街中が恋に落ちた。この曲のフックはニューヨークの5つの行政区すべての車から聞こえてきた。彼の“Shmoney Dance”は学校で流行り、そしてVineでも流行した。今振り返ると、“Hot N***a”がローカルな現象にとどまらない広がりを見せたのは嘘みたいな話である。とくにNYPDが彼がその成功に浴するチャンスを得る前に、彼のキャリアを終わらせてしまった今となっては。しかし一瞬の出来事ではあったものの、彼のエネルギーとパーソナリティがニューヨークのヒップホップをスポットライトの中に戻したのは確かである。–Alphonse Pierre
62. Rihanna: “We Found Love” [ft. Calvin Harris] (2011)
絶望というのはポップ・ソングの中であまり描かれないものである。悲しみ?それはある。失恋?もちろん、それもある。しかし「絶望」という言葉は破損の感覚を含んでいて、直接向き合ったり、ましてや踊るのにはあまり適さないものだ。しかしなぜだか、RihannaとCalvin Harrisは豪華絢爛なコラボレーション“We Found Love”において、そのアイデアをラジオ的な語彙にねじ込むのに1分もかからなかった。彼女の歌う言葉は世界で最も暗い街角にいざなうようなものである一方、温かくも執拗な、灯台のようなドラムの鼓動は星空や人でパンパンのダンスフロア、人間の肌触りを感じさせる。Rihannaに関する物事の多くがそうであるように、“We Found Love”はその平易な語用法によってポップ・カルチャーの一角をなし、そのメッセージの世代的な重力はその魅力を強めているだけである。近頃、Rihannaは彼女のプラットフォームを使って多くの重要な問題について発言している:性と生殖に関する権利への賛同、コリン・キャスパニックへの賛同、大統領への反対。彼女はキャリアのこの時期、一つ一つの動きが彼女が無敵であることを示唆するようなポイントにあった。彼女が探していた何かを見つけたということは、彼女が探し求めること自体をやめるということを意味しないからだ。–Sam Sodomsky
61. EMA: “California” (2011)
Erika M. AndersonがEMAとして初めてリリースしたアルバムに収録された中でも中心的な役割を持つドローン風の “California” は心から歌われるゴスペル・ソングである――絶対的に不可能な逆境を目の前にして屈服すること、自身よりも強大な力を持った者の前で自らの重荷を下ろすことへの誘い。ビートレスで絶え間ないトラックは音楽よりも天気のように聞こえ、まるでAndersonが逃れることのできない嵐のようである。“California” の持つカタルシスはその嵐が過ぎ去ったことに対してではなく、彼女がそれに屈服し、そうすることでもう一度始め直してみようとしていることに対してである。
曲がピークに差し掛かると、Andersonは草競馬について歌った古いミンストレル曲 “Camptown Races” を引用する:“I bet my money on the bob-tailed nag/Somebody bet on the bay(私は尾を短く切った馬に賭けた/鹿毛の馬に賭ける人もいた)”。歴史的に見れば、これは自分の運を試す心構えを持っている積極的な若者たちの物語として、喜劇として演じられてきた。しかし150年後のAndersonは、マニフェスト・デスティニーから解毒され、アメリカの隅にいながら、失敗したということはないを意味するのかという知識以外に見せつけるものを持っていないのだ。–Mike Powell