海外音楽評論・論文紹介

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Weekly Music Review #61: BLACKSTARKIDS "Puppies Forever"

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BLACKSTARKIDSの「Puppies Forever」をApple Musicで

Puppies Forever - Album by BLACKSTARKIDS | Spotify

Amazon Music - BLACKSTARKIDSのPuppies Forever [Explicit] - Amazon.co.jp

BLACKSTARKIDS "Puppies Forever"(2021)

Remi WOLF - Juno CD at Juno Records.

Remi Wolf "Juno"(2021)

なんだかこの2作は同日にリリースされたということや、"Juno"というタイトル(前者には同名の楽曲が、後者はアルバムタイトル)、更にはジャケットの色使いに至るまで、なんだかにたものを感じる。両者ともヒップホップやR&Bといった既存のいわゆる「ブラック・ミュージック」という枠組みを超えた表現をしているという点も共通している。

ブラック・ミュージックと極彩色、といえばPファンクが始祖となるだろうか、でもBLACKSTARKIDSやRemi Wolfのそれはどうもそれとは違う。Pファンクのそれはショーアップやサイケデリアと(確か)結びついたそれで、それはどちらかといえば現在のTrippie ReddやLil Yachtyといった派手髪ラッパーへとつながっていく系譜のように思われる。だとすればBLACKSTARKIDSやRemi Wolfのこの色使いはどこから来ているのかと言われると、たぶんOdd Future周りなのではなかろうか。

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Tyler, the Creator "Cherry Bomb"(2015)

Odd Future Official Online Store

Odd Futureのマーチ

実際にBLACKSTARKIDSのメンバーたちはTyler, the Creatorを影響源として上げているわけだけれど、面白いのはTylerの名前ではなくKanye Westの名前が本作では2度でてくるというところだ。

I just wanna be the best like 3K or Kanye
('Revolt Syndrome*')

Like Kanye bitch I’m stronger
('Fight Club')

Amazon | Graduation (Clean) | West, Kanye | イーストコースト | ミュージック

Kanye West "Graduation" (2008)

思えば「ピンクのポロシャツを着た男」としてJAY-Zの前に現れたカニエこそ、BLACKSTARKIDSやRemi Wolfにつながる極彩色の色使いの始祖なのかもしれない。先日友人と話していて、「派手髪が下の世代だと全然自然に受け入れられている」という話をしたのだけれど、カニエの出現から20年ほどが経とうとしている今、それがようやくスタンダードになりつつある、というすごい話なのかもしれない(もちろん80年代回帰や、特に日本ではYouTuberの浸透も関係してきていると思うが)。