Polarity by Ivo Perelman/Nate Wooley テナー・サックス奏者=Ivo Perelmanとトランペッター=Nate Wooleyが共作した『Polarity』は二重即興奏の可能性を探求する1枚である。これまでに、WooleyはAnthony Braxton、John Zorn、Ingrid Larubrockといった面々…
Genesis by XIXA 初めて聴く人であっても、このトゥーソンを拠点とするロック・バンドであるXIXAがなぜ自分たちの音楽を「神秘的な砂漠のロック」と称しているのかを理解するのに掃除冠はかからないだろう。彼らの2作目となる『Genesis』の1曲目 “Thine Is t…
Tidibàbide / Turn by Kìzis Kizisが『Tidibàbide / Turn』でコラボレートしたアーティストは膨大な数である。多岐にわたる、3時間半の大作の中で、Kizisーー以前はMich Cotaとして活動していた、アルゴンキン語族の「Two-Spirit(先住民の“第三の性”)」の…
Rough Trade / 1988 1985年のある晩、The Cocteau Twinsが珍しくテレビに出演した。橙色の輝きに包まれながら、その年に発表された『Tiny Dynamine EP』に収録された “Pink Orange Red” を演奏していた彼らはどこか別の世界の住人のようなオーラを放出してい…
After the House by Sun Kin ロサンゼルスを拠点とするエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー=Kabir Kumarが作る音楽はどこか儚さを感じさせる。常にベッドルーム・ポップやサイケデリック・フォーク、ディスコ、ハウスと言ったジャンルを横断し…
Tasjan! Tasjan! Tasjan! by Aaron Lee Tasjan セルフタイトルのアルバムには二種類ある。第一に、デビュー作というのがよくある(「自己紹介させてください」というようなもの)。第二にそれとはまったく異なり、もう一度自己紹介をするための手動リセット…
Fantasy / 1978 1986年の大晦日、シルヴェスターは「The Late Show With Joan Rivers」にそびえ立つように高く、オレンジのシャーベット用な色をしたウィッグに、装飾が施されたパンツスーツという姿で登場した。彼の出世作となったシングル、ミラーボール・…
TYRON by slowthai 自身のデビュー作『Nothing Great About Britain』において、ノーサンプトンのラッパー=Slowthaiはネグレクトされてきた世代の怒りを無秩序でパンクに影響されたヒップホップへと昇華させた。このアルバムはSlowthaiの貧しい労働階級の出…
Ignorance by The Weather Station 11年前、The Weather Stationとして初めての作品を発表してから、Tamara Lindemanは自身のサウンドの境界線を広げ続けてきた。2011年の『All of It Was Mine』のようなアルバムでは赤裸々にそぎ落とされたフォーク・ミュー…
Devil's Rain by maria bc Maria BCが自身のデビューEP『Devil's Rain』を録音したのは、ロックダウン中に感じたアパートでの孤独からだった。その声を優しいささやきにとどめ、甘美なギターのループと柔らかいオペラ風の音楽の上で、そして孤独な生活の制限…
Merlynn Belle by Tele Novella 「どこへいってしまったの/その行方を誰も知らない」テキサスのサイケ・ポップ・バンド、Tele Novellaの2作目となる『Merlynn Belle』の幕開けで、Natalie Ribbonsはこう歌う。爪弾かれるフラメンコ風のギターとぜんまい仕掛…
Boafo Ne Nyame by Star Lovers 1987年、シンガーのK. Aduseiとやがて有名なレコード・プロデューサーとなるFrimpong Mansoは、多くの偉大なハイライフ・ミュージシャンがスターダムへの階段を駆け上がったAccraの音楽スタジオで出会った。その2人は共に、ガ…
Rap-A-Lot / 2002 Devin Copelandはラップよりもブレイクダンスに熱中していた。テキサスを渡り歩いていた1980年代中盤、彼は目に入ったダンス・クルーであればどのクルーとでも繋がりを持つことが出来た。ありのままの彼自身でいることは、彼が思いつくよう…
Фантомные Чувства by Ploho ロシアのバンドPlohoの最新作『Фантомные Чувства』は、英語で“phantom feelings(=“幻の感覚”)” を意味する。作品に相応しいタイトルである:このシベリアに拠点を置くバンドは、メランコリーの香りのするクラブ・ミュージッ…
I DUE EVASI DI SING SING by Ennio Morricone 1960年代のEnnio Morriconeの映画スコアがリイシューされたと聞いて、ポンチョとカウボーイ・ハットについ手が伸びてしまったカジュアルなファンも多いだろう。しかし『I Due Evasi Di Sing Sing』はスパゲティ…
Sound Ancestors by Madlib 理論上、MadlibとFour Tetの組み合わせは奇妙であるように思える:前者はジャズ、ファンク、ヒップホップに根差した、サンプルを主体にしたビートを作るのに対し、後者は電子音をきしませ、そこにテクノ、アンビエント、難解なダ…
Gas Lit by Divide and Dissolve Takiaya ReedとSylvie Nehillは言葉をすりつぶしたりはしない。それどころか、彼らは言葉自体使うことがない。彼らが選んだドローン・メタルという表現方法は、明確なステートメントを発話するのには向いていない――その内容…
Palberta5000 by Palberta 準アンダーグラウンド・レーベル=Feeding Tubeからの初期のリリースの時点から、ニューヨークのアートスクールで結成されたパンク・トリオ=Palbertaの楽曲は縫い目から裂けていくようでありながらも、はっとさせるような斜に構え…
Marcos Resende & Index by Marcos Resende & Index Marcos Resende & Indexの1976年のセルフタイトル作はこれまでリリースされたことがなく、それはこのブラジルの有名ジャズ・ファンク・バンドの出発点が不明瞭なままであることを意味していた。これらの楽…
Mountains (20th Anniversary Expanded Edition) by Mary Timony Mary Timonyのファースト・ソロ作がリイシューされるのにこれほど適した時機はなかったかもしれない。最初のリリースから20年がたち、『Mountains』は隔離され鬱屈した世界の中で、接続と交わ…
Yellow River Blue by Yu Su バンクーバーを拠点にしている音楽家=Yu Suはこのデビュー・アルバム『Yellow River Blue』で、ダウンテンポ・ハウスとアンビエント・ダブの狭間でゆらぎながら、このアーティストがここ数年の間に確立してきた丁寧に角がとられ…
Saturday Night - South African Disco Pop Hits - 1981 to 1987 by Cultures of Soul 1980年代のダンス・ミュージックの震源地を考えた時、最初に思い浮かべるのはニューヨーク、デトロイト、シカゴといったあたりだろう。しかし、ボストンのレーベル=Cult…
Perpetual Chaos by Nervosa ブラジルのスラッシュ・メタル・バンド=Nervosaの4作目『Perpetual Chaos』は昨年はじめのメンバー編成の変更によってギタリストのPrika Amaralが唯一の創設メンバーとなってから初となる作品である。しかしそれは不幸中の幸い…
Going to Hell by Lande Hekt 「私はこれまで他人のために生きてきた/それはいい意味でではなく、本当にクソみたいな意味で」Lande Hektはこの『Going to Hell』のタイトル曲でこう歌っている。この曲はカトリック教会がLGBTQの人々の受け入れを拒否したこ…
Kanawa by Nahawa Doumbia Nahawa Doumbiaの音楽家としてのキャリアをこの10年の間2度のリイシューで祝福してきたAwesome Tapes from Africaから、マリのワスールー音楽をけん引する彼女の新譜が登場する。この『Kawana』はDoumbiaの40年間に及ぶ音楽の旅の…
Maquishti by Patricia Brennan マレット打楽器奏者/即興演奏者/作曲家のPatricia Brennanはこの『Maquishti』において、彼女が受けてきたクラシック音楽の訓練の厳格な規律の外側に広がっている芸術的な自由を追い求めている。このタイトルはナワトル語で…
Magic Mirror by Pearl Charles Pearl Charlesの2018年リリースのデビュー作『Sleepless Dreamer』は彼女の70年代カリフォルニア・カントリー・サウンドを自信たっぷりに確立したが、それに続くこの『Magic Mirror』において彼女ははっきりとポップな領域に…
INF001: The Message by Gerry Weil 1971年、ベネズエラのピアニスト/作曲家=Gerry Weilはジャズ・フュージョンのムーヴメントの最盛期に現れた野望に満ちていて強烈な作品『The Message』を発表した。当時、Soft MachineやMahavishnu Orchestra、Weather …
Love Is Where the Spirit Lies by Lon Moshe & Southern Freedom Arkestra ジャズは常にスピリチュアルな営みであり続けているが、1960年から70年代になると、ブラック・パワー運動の政治的/スピリチュアルなコンシャスネスが自然と音楽に浸透し始めた。Al…
Imagination Never Fails by Erang この『Imagination Never Fails』のジャケットを見れば、これは『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』のPanos Cosmatos監督によるB級映画のサントラであるように見えるかも知れない。この真紅でサイケデリックな過剰感の…