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<Bandcamp Album of the Day>Bunny Scott, “To Love Somebody”

ジャマイカキングストンにあるLee "Scratch" PerryのBlack Ark Studios――Bob Marley and The WailersJunior MurvinMax RomeoThe CongosThe Heptonesなどをもてなしたのと同じホール――で制作されたBunny Scottの『To Love Somebody』はジャマイカのロック界でも最高級の二人によって指揮された、海外のチャート・ヒット曲をアレンジする診療所のような作品である。この語Scottはバンド=Third Worldのフロントマン、Bunny Rugsとして、2014年にこの世を去るまで国際的な名声を手にした。そのグループに加入する1年前にScottはこのLP――今回Freestyle Recordsからリイシューされる運びとなった――をPerryのプロデュースで録音した。この二人によって、ロックステディやレゲエと、ポップ、ソウル、ファンクといった国際的なポップが見事に統合されている。

Scottによる ”To Love Somebody” のカバーは、The Bee Geesのオリジナルに忠実でありながら、ScottのコクのあるボーカルがBarry Gibbsの率直な歌唱を塗り替えている。それとは対照的に、Bill Withersの貧弱なファンク ”Use Me” はScottとPerryによって大胆に手が加えられていて、陽気でミッドテンポなトレンチタウン風に仕上げられている。そしてさらにはThe Upsettersの有名なインスト ”Return Of Django” (1969) の輪郭をリサイクルした ”Big May” は響き渡るオーケストラによるイントロが印象的だ。

この新しいリイシューには、William DeVaughnのクラシック ”Be Thankful for What You Got” を熱烈に作り替えた素晴らしいヴァージョン ”Be Thankful” (オリジナル未収録)も収録されている。「背中にはダイアモンド、サンルーフトップ/ギャングスタ・リーンでシーンを掘り下げる」Scottは彼の肺いっぱいを使って歌い上げる。彼の歌唱のアクセントは、Perryのサウンドには珍しく地域的な訛りが比較的希薄である。ここに収められたすべてがこれほど強力な瞬間を持っているわけではないが――例えば ”Sweet Caroline” は奇妙なチョイスである――、『To Love Somebody』はモータウンとモンテゴ・ベイをつなげる架け橋であり、双方のファンにとってかなり聞きやすい作品となっている。

By Dean Van Nguyen · February 22, 2021

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