海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

<Bandcamp Album of the Day>Oddisee, “ODD CURE”

ODD CURE by Oddisee 『ODD CURE』はアルバムと言うよりは、COVID-19の世界的パンデミックの初期段階に際して、それに人生を適応させようとするさまを描いた人間研究記事の、ヒップホップ版である。このプロジェクトはOddiseeが自身の住むブルックリンのスタ…

<Bandcamp Album of the Day>DEHD, “Flower of Devotion”

Flower Of Devotion by DEHD 意図せずともロックダウン生活の機微を描いた作品が今年これまでいくつも発表されている。Owen Pallett『Island』、Tenci『My Heart Is an Open Field』、Midwife『Forever』など。しかし、この生活が終わった後の感覚を描いた作…

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 28: 65位〜61位

Part 27: 70位〜66位 65. Drake: “Worst Behavior” (2013) www.youtube.com 2013年、我々は“タフなドレイク”と出会った。『Nothing Was the Same』は彼の車高デビューパーティーで、“Worst Behavior”は彼のアンセムだった。若きドレイクが気まずそうに的を得…

<Bandcamp Album of the Day>Bing & Ruth, “Species”

Species by Bing & Ruth 10年以上に渡り、Bing & Ruthは滝のようになだれ落ちるピアノやオーケストラルな装飾、快活な電子音やミニマリスト風のドローンで飾り立てられた、感情に訴えかけるようなアンビエントを作曲してきた。しばしば、その作品は広大な感…

<Bandcamp Album of the Day>Deerhoof & Wadada Leo Smith, “To Be Surrounded By Beautiful, Curious, Breathing, Laughing Flesh Is Enough”

To Be Surrounded By Beautiful, Curious, Breathing, Laughing Flesh Is Enough by Deerhoof 先駆者であるYo La Tengoと同じように、Deerhoofはあまりにも長い間いい作品を作り、いろんなことに関心を持っているために、その存在を当たり前に思ってしまいそ…

<Bandcamp Album of the Day>Rebel Wizard, “Magickal Mystical Indifference”

Magickal Mystical Indifference by REBEL WIZARD ここ10年かそこらの間、ワンマン・エクストリーム・メタル・ネクロマンサーのNKSVはブラスト・ビート、スピーディーなギター・リフ、窒息しそうな叫び声、不吉なノイズなどを彼なりに混ぜ合わせ、Nekrasovや…

<Bandcamp Album of the Day>Margo Price, “That’s How Rumors Get Started”

That's How Rumors Get Started by Margo Price 70年代後期〜80年代初期のTom Petty & The Heartbreakersの全盛期のあいだ、Pettyの友人であるStevie Nicksがバンドの一員になりたがっていたというのは有名な話である。もしそれが現実になっていたら、それは…

<Bandcamp Album of the Day>Zara McFarlane, “Songs Of An Unknown Tongue”

Songs Of An Unknown Tongue by Zara McFarlane UKのジャズ・シンガー=Zara McFarlaneは彼女の最新作『Songs From An Unknown Tongue』の一曲目 “Everything is Connected” で、人生という広大な蜘蛛の巣を探索している。“The branches that reach out to g…

<Bandcamp Album of the Day>God Colony, “CULT”

CULT by God Colony 理論上、“Paper” の楽曲のアイデアはうまくいきそうもないものだ:ディストーション、フィードバック、歓喜の声、口笛、めまいがするようなパーカッションの連隊による歪んだスウィングが貼り付けられたピリッとするコルクボードであり、…

<Bandcamp Album of the Day>TJO, “Songs for Peacock”

Songs for Peacock by TJO Tara Jane O'Neilの「省略の美学」によるギターの抽象化の長年のファンであろうが、今日まで彼女の名前を聞いたことがなかろうが、『Songs for Peacock』に現れる数少ない音のそれぞれを認知するのには数秒もかからないだろう。O'N…

<Bandcamp Album of the Day>Thiago Nassif, “Mente”

Mente by Thiago Nassif ここ10年かそこらの間、Thiago Nassifの音楽はポピュラーとアンダーグラウンド両方を包括し、そこにノイジーで加工されたサウンドとトロピカリアにインスパイアされたバラッドを並列していた。彼の最新作で、Arto Lindsayのプロデュ…

<Bandcamp Album of the Day>Skeleton, “Skeleton”

Skeleton by Skeleton パンデミックが起こるまでの間、オースティンの三人組=Skeleton――ドラマー/ヴォーカリストのVictor Ziolkowski、彼の兄弟でギターのDavid、そしてベーシストのCody Combs――はプリミティヴなスラッシュ・メタルとファースト・ウェーヴ…

<Bandcamp Album of the Day>Asher Gamedze, “Dialectic Soul”

Dialectic Soul by Asher Gamedze ドラマー=Asher Gamedzeによるこのデビュー・アルバムを理解するさい、フィジカル面、メンタル面、スピリチュアル面、そして感情面での機敏さが概念的な鍵となる。この南アフリカのミュージシャンは2019年のAngel Bat Dawi…

<Bandcamp Album of the Day>Mulatu Astatke & Black Jesus Experience, “To Know Without Knowing”

To Know Without Knowing by Mulatu Astatke & Black Jesus Experience エチオピアの音楽のほとんどを作り上げているペンタトニックな “kignit” のモードはこの国に特有の音であり、このジャンルの父=Mulatu Astatkeのおかげで、エチオ・ジャズはその始まり…

<Bandcamp Album of the Day>SAULT, “UNTITLED (Black Is)”

UNTITLED (Black Is) by SAULT 1965年、マルコムXの暗殺事件を受けて、詩人・オーガナイザー・文化評論家であるAmiri Barakaはアメリカ黒人の義憤を結晶化し "Black Art" という詩を書いた。後の文化の礎となったこの詩の中でBarakaは主に黒人解放のために使…

<Bandcamp Album of the Day>Brother Theotis Taylor, “Brother Theotis Taylor”

Brother Theotis Taylor by Brother Theotis Taylor 92歳のスピリチュアル・シンガー、Brother Theotis Taylorは60年以上に渡ってジョージア州のフィッツジェラルドに住んでいる。人生の大部分の間、彼は家族とともに、気を切ってテレピン油を作るという仕事…

<Bandcamp Album of the Day>Hum, “Inlet”

Inlet by Hum 問題:バンドのディスコグラフィーの中で傑作とされている再結成アルバムはどれだろう?オリジナル・メンバーによるDinasour Jr.が2008年の『Beyond』でそれを成し遂げている。80年代後期におけるほろ苦い終焉を考えると驚くべき帰還であった。…

<Bandcamp Album of the Day>Gum Country, “Somewhere”

Somewhere by Gum Country ギター・ロックがウロボロスであるならば、我々は今、2010年代初頭のガレージ・シーンの残骸をたらふく平らげたところである。どのバンドもリヴァーヴのプールで飛沫を上げ、Burger Recordsからテープを出すのが楽しかったのんきな…

<Bandcamp Album of the Day>MIKE, “weight of the world”

weight of the world by MIKE ニューヨークのラッパー、MIKEが自身のアルバムに『Weight of the World』というタイトルをつけるのにこれだけの時間がかかったことは、ある意味では驚きである。2017年の出世作『May God Bless Your Hustle』以来、彼の音楽を…

<Bandcamp Album of the Day>Nicole Mitchell & Lisa E. Harris, “EarthSeed”

EarthSeed by Nicole Mitchell & Lisa E. Harris 2006年の冬、アメリカが凄惨な戦争と国外のテロに巻き込まれ、国内では広大な監視体制が作り上げられていたころ、文筆家でアフロフューチャリストであったOctavia Butlerが亡くなった。それから14年後、彼女…

<Bandcamp Album of the Day>Angela Munoz, “Adrian Younge presents Angela Munoz Introspection”

Adrian Younge presents Angela Munoz Introspection by Angela Munoz Angela Munozは驚くべき声の持ち主だ。青々しい率直さと老練な知恵が拮抗しているのだ。彼女のデビュー・アルバムである『Introspection』は多才な音楽家であり長年にわたってL.A.の音楽…