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<Bandcamp Album of the Day>Asher Gamedze, “Dialectic Soul”

ドラマー=Asher Gamedzeによるこのデビュー・アルバムを理解するさい、フィジカル面、メンタル面、スピリチュアル面、そして感情面での機敏さが概念的な鍵となる。この南アフリカのミュージシャンは2019年のAngel Bat Dawidのアルバム『The Oracle』への参加によってリスナーに知られるようになった。そのアルバムの中でGamedzeはクラリネット奏者/シンガーと15分に渡るデュエット “Cape Town” を繰り広げた。それと同じように広がりのあるこの2枚組LPで、このドラマーは自身のバンドを率いて、悲しげで鮮やかにメロディックスピリチュアル・ジャズの作曲を披露し、それらの下地として植民地主義に対する長年の抵抗における哲学的モデルを使用している。

Dialectic Soul』は2日に渡ってスタジオでライヴ録音され、メンバーはGamedzeの他にベーシストのThembinkosi Mavimbela、テナー・サックス奏者のBuddy Wells、トランペット奏者のRobin Fassie-Kock。3パートに別れた ”State of Emergence Suite” で彼らのしなやかなインタープレイが早速聴かれる。ドラマーによる転ぶようなフィルがそれぞれのプレイヤーたちにスポットライトを当てるステージを用意している。この4人組はその後も多才さを披露している。 “Eternality” の注意深いソロや “Hope In Azania” (Gamedzeがライナーノーツで説明する曰く、「南アフリカの自由化を想像したもの」から名前をつけた)の祝祭的サウンドなど。ドラマーの声も “Interregnum” で現れ、祖先の伝統を続けていくという歴史的な務めを自覚した幼い子供についての、オリジナルのショート・ストーリーを語っている。『Dialectic Soul』で最も感動的な一節は “Siyabulela” である。ゴスペル曲を改作したこの曲ではバンドはペースを落とし、その優しい揺れの中で、シンガーのNono Nkoaneはこの瞑想的で生を称えるこの曲に豪勢なヴォーカルを付け加えている。これは悲しく、そして一度立ち止まって考えるような瞬間であるかも知れないが、Gamedzeは素早く、アルバムのライナーの締めの文章の中で、このグループが長くは休んで入られないということを指摘する。「魂というのは弁証法的ある。運動とは命令的なものである。我々は動き続ける」と。

By Jesse Locke · July 06, 2020

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