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<Bandcamp Album of the Day>Gum Country, “Somewhere”

ギター・ロックがウロボロスであるならば、我々は今、2010年代初頭のガレージ・シーンの残骸をたらふく平らげたところである。どのバンドもリヴァーヴのプールで飛沫を上げ、Burger Recordsからテープを出すのが楽しかったのんきな時代。ほら、あのオバマ時代だよ。ヴァンクーヴァー経由ロサンゼルス発のバンドGum Countryの最新作『Somewhere』は健康的で楽しみに満ちた、あの頃のサウンドの残響である(つまり、好むか好まざるかに関わらず結晶化されたサウンドである)。このバンドをBurgerと結びつけるのはディスでもなんでもなく、単純なファクトである――このオレンジ・カウンティのレーベルは、90年代中盤の懐かしさを持つ、この粘っこい塊のUSヴァイナル・ヴァージョンのリリースを手掛けている。最初から最後までひねりの効いたメロディや遠回りをするコーラス、メロウなヴァイヴス、そしてふんだんな量のりヴァーヴが愉快に鳴らされている。

The CourtneysのCoutney Garvinとマルチ奏者のConnor MayerによるプロジェクトであるこのGum Countryの最初の宅録デモは2017年、LAのLolipop Recordsからリリースされた。その後バンドはカリフォルニアに完全に移り住み、彼らの音楽がこのシーンの最後の飛沫のように感じられることはこの文脈では意味をなしているのだ。The Courtneysのファンであれば、Garvinがフックのあるメロディや冷笑的な歌詞を書くのに長けていることに気がつくであろうが、The Courtneysがよりゴリゴリとした楽曲を作り上げるのに対し、Gum Countryのアプローチはより簡潔でカラッとしており、ファジーサウンドと分厚くてマフのかかったベースラインが、間違いようのないDeal兄弟と、Bethanyがまだハイな時期のBest Coastからの影響を感じさせる。

『Somewhere』は中盤の ”Pills” でペースを上げる。ブンブンと音がうなり、ダウナーでありながらポップであるこの曲は、なめらかなシンセのメロディが聴きものである。それに続くのが ”It Lives It Breeds It Feeds” のディストーションサウンド。ここでGarvinは ”Drink my blood” と ”Drink it up” で3〜4回連続でライムしている。これらの楽曲は特に内容があるわけではなく、『Somewhere』は究極にはかろうじて退屈を逃れている受動的な聴取体験であり、Garvinによる巧妙な耳に残る仕掛けと、ローファイと非ローファイの完璧なバランスを作り上げている素敵なプロダクションだけがそこにある。しかし、カリフォルニア流に言えば、「どうでもいい」。”Is there a brain inside my head?(ぼくの頭には脳みそが入っているのか?)” と気怠く、素晴らしく控えめなバンガー ”Brain” のヴァース始まるが、このようにヴァイブスに頼った音楽は、あの灰色の物質に負担をかけるようには設計されていない。もしそれが壊れたりしてなければ、の話だけれど。

By Mariana Timony · June 26, 2020

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