海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>God Colony, “CULT”

理論上、“Paper” の楽曲のアイデアはうまくいきそうもないものだ:ディストーション、フィードバック、歓喜の声、口笛、めまいがするようなパーカッションの連隊による歪んだスウィングが貼り付けられたピリッとするコルクボードであり、その厚みの中で咆哮するAZADI.mp3のしわがれた要塞が、クラブでの男性による不必要な接近を撃退している。しかし、それは実際うまくいっているのだ。それどころか、ポップ・ソングのようにすら聴こえるのだ:実際よりも15年遅く録音され、実在的な重みを課せされ、グリッチ・リミックスを施されたAmerieの “1 Thing” を想像してほしい。その意味で、God Colonyのデビュー・ミックステープからのこのリード・シングルはこのプロデューサー・デュオのアプローチの典型的な例である。複雑な編曲とクラブ・レディなグルーヴの中に強力なヴォーカリストを埋め込んでいる。

10曲入りと簡潔であるが、『CULT』はそれでも幅広く達者なプロダクションを提示している作品であり、ロンドン経由リヴァプール出身の二人のA&R的嗅覚の良さを証明するものである(これまでのコラボレーターには多面的なクリエイター、Kojey RadicalやGaikaがいる)。“Joy” は削ぎ落とされた、弱さからの回復である:Sine'Galの声はありのままの姿で鍵盤、そしてやがて爆発するガラス製のドラムの上を舞い上がっていく。“Don't Ask For Me” では肉体から引き剥がされたいくつかのヴォーカルの断片と花火のようなサンプルを使って感情を絞り出しているが、NYEのパーティの残り滓から作られた最初の音色の楽観主義に空虚感を感じずにはいられない(“If the rest of the year turns out as good as today has started, then I haven’t got a worry in the world, mate(”一年の始まりである今日と同じくらいこの一年がいいものになったら、この世界に心配事はないさ”))。その他にも、Samirah Raheem(SlutWalk 2017でのインタヴューがバズったことで知られている)はなめらかで、性を肯定する説教を “Girls”の洞穴のようなトラップ・ビートの上で繰り出し、サウスイースト・ロンドンの注目MC=Flohioは “The Real” のドラムロールの上で勝ち誇るようにラップしている。そしてHaleek Maulは “Places In My Head” の冷たいシンセの上でゆったりと語る。As midnight manifestos go, this is up there with the best(よく意味がわかりませんでした、無力…).

By Will Pritchard · July 10, 2020

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