海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Pearl Charles, “Magic Mirror”

Pearl Charlesの2018年リリースのデビュー作『Sleepless Dreamer』は彼女の70年代カリフォルニア・カントリー・サウンドを自信たっぷりに確立したが、それに続くこの『Magic Mirror』において彼女ははっきりとポップな領域に足を延ばしている。収録された10曲の中で、このL.A.のシンガー・ソングライターはパーソナルな成長を認識することから得られる満足感について歌い、自身の人生の中の楽しかった――そしてつらかった――経験を振り返っている。ここでCharlesの歌詞は荒涼とした響きを湛えているが、平坦なボーカルと喜びに満ちたメロディーが希望こそその下に通底する主題であることを確証してくれている。

 レトロなサウンドが『Magic Mirror』の屋台骨となっていることは間違いないが、このアルバムはなにか形を変え続けているようなものであるように感じる。まばゆい1曲目の ”Only For Tonight” ではABBA風のディスコを楽しみ、その後 ”What I Need” ではギアを変え軽やかで神秘的な領域へと歩みを進めていく。荘厳なハープシコードとペダル・スティール・ギターがカントリー寄りの ”Don't Feel Like Myself” を駆動させる一方で、淡い色合いのタイトル曲はCharlesのボーカルとピアノだけで構成されている。

アルバムはロマンティックな ”As Long as You're Mine” で幕を閉じる。そこでCharlesは歌う。「知らせは明白/終わりは近い/涙を拭いて/泣いていたってしょうがないから」。それは新年を祝うにふさわしい、前向きな感傷である。

By Rachel Davies · January 14, 2021

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