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<Bandcamp Album of the Day>Aladean Kheroufi, “Beauty Beyond Grief”

Aladean Kheroufiの名はまだ広く知られていないかもしれないが、彼の音楽的な多才さは雄弁である。故郷のアルバータ州エドモントン――彼の最新のヴィデオは誇らしげにも、愛してやまないピザ屋さんで撮影されている――の高校を卒業してから、アルジェリア系カナダ人のマルチ奏者である彼はベース、鍵盤、ヴァイオリン、トランペット、チューバ、そしてヴィブラフォンの才能を買われ、引く手あまたのセッション・プレイヤーとなった。WaresMarleana Moore、ネオ・カントリー歌手のBobby Tenderloin(と彼が最近行ったOrville Peckとのツアー)とともに作業するのに加え、KheroufiはDaotoneのソウルの殿堂のプロダクション・プロジェクトにおいて最高のアーティストから多くを学んできた。

Kheroufiの最新EP『Beauty Beyond Grief』は、古いソウルのカヴァーを集めた中で彼が軽々と紡ぎ出すつややかなタッチを聞かせる。彼が自身の歴史に自覚的であることは明らかで、Arthur Conleyの1969年のヒット ”Take A Step (In My Direcition)” をセレクトしているが、冷え切ったクラシックを引っ張り出してくる大胆さも持ち合わせている。トランスジェンダーのアイコンであるJackie Shaneは2017年、Numero Groupが発売した彼女の仕事を編纂したボックス・セットのタイトル曲として知られるようになった ”Any Other Way” で遅すぎる認知を得た。Kheroufiの手によって、オリジナルのブラスの揺れるようなフィーリングは、Timmy Thomasを思わせるようなリズムボックスの打楽器によるドリーミーなミニマリズムに置き換えられている。しかしどのようなスタイルがこの楽曲の原動力になっていようと、前のパートナーに当てられた歌詞の中のトゲはそのままの力強さで残っている。“Tell her that I’m happy/ Tell her that I’m gay/ Tell her I wouldn’t have it/ Any other way.(彼女に私はいま幸せだと伝えてくれ/彼女に私はゲイであると/このやり方でしか/生きられないのだと)”。

By Jesse Locke · July 31, 2020

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