<Bandcamp Album of the Day>Madlib, “Sound Ancestors”
理論上、MadlibとFour Tetの組み合わせは奇妙であるように思える:前者はジャズ、ファンク、ヒップホップに根差した、サンプルを主体にしたビートを作るのに対し、後者は電子音をきしませ、そこにテクノ、アンビエント、難解なダンス・ミュージックをこちゃまぜにしてかけていく。しかし、両者の違いはそれだけであるといえばそれだけである。両者ともにジャンルの中に閉じこもったり、あるいは自分に期待されていることに恩義を感じたりはしない。『Sound Ancestors』は名義上Malibのアルバムということにはなっているが、実際のところは近年彼がラッパーのFreddie Gibbsや兄弟のOh No、ドラマーのKarriem Rigginsと作ってきたようなコラボレーション・プロジェクトである。
このアルバムは何百ともある彼の未完成・未発表のビートや、彼がここ数年間でほかのミュージシャンたちと録音してきた生楽器の演奏から選び取られたものである。Four Tetはその素材を受け取り、Madlibの現時点までの仕事の集積としてこの『Sound Ancestors』のスケッチを描いた。彼の特徴でもある無秩序さをいくらか残しつつ、新しいリスナーのために少々リファインも加えている。“The Call”の押し寄せるようなパーカッションとループするベースは、Madlibの『Rock Konducta』シリーズのグランジ―な要素を体現している。“Hang Out (Phone Off)” のラウドなエレクトロ・ファンクのバウンス感はブラック・エンパワーメントやモンサントの恐怖についてのヴァースを確約するようで、Georgia Anne Muldrowに提供したトラックを思い起こさせた。アルバムの後半――特に“Latin Negro” や “Duumbiyay”――ではFour TetはMadlibの国際的な側面を取り扱っている:彼の高名な『Midicine Show』シリーズの2~3作目で聞かれるようなものに似ている。
その結果、再利用されたサイケ・ロック、オブスキュアなソウル、そしてドラム中心のブレイクビーツが靄のように漂う41分の広大なセットが完成した。全体を見れば、この作品はMadlibの多くの側面を表している:レコード漁りが好きなジャズ・ファン、そしてブラジルやアフリカのサウンドを愛している熱心な自作農といった。Four Tetの助けを借りることによって、この作品はMadlibこれまで作品の緩さを引き継ぎつつ、滑らかなで一貫性のあるステートメントであるようにも聞こえる。Madlibの作品はいつもそうだが、いったい「これ」が金庫の中でどれだけ眠っているのだろうと思ってしまう。しかし歴史が繰り返すものであるとすれば、『Sound Ancestors』はより広いヴィジョンに向けた最新の第一歩であるにすぎない。これは、あなたが聞くまで自分がそれを必要としていたことも知らなかったような、そんな音楽だ。
By Marcus J. Moore · February 01, 2021