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<Bandcamp Album of the Day>Swarvy, “Sunny Days Blue”

ここ10年で、Swarvyは一つのサウンドやジャンルにとどまることのない、信頼の置けるプロデューサーとなった。彼がよく知られたラップやR&Bを自身のビートにブレンドしようが、自身が作り上げたジャズやソウルを中心に添えた編曲で友人たちを演奏させようが、Swarvyの方法論は、彼のジャンルを捻じ曲げる力と同じように器用で熟練していた。次の作品がどれほど以前のものと異なっていても、その一つ一つの進行が自然な次の第一歩であるように感じられるのだ。

Sunny Days Blue』は彼のキャリアの中でも最も大きな跳躍であり、Swarvyが自身の作品の中で歌声を披露するのは初めてのことだ。しかし、突飛なのものを期待してはいけない。その代わり、彼は自分の声を楽器の演奏の内部にフィットするように抑制し、ミッド〜スロウなテンポと牧歌的なトーンで揃えられている。『Sunny Days Blue』田舎の田園の風景やPCHカリフォルニア州道1号線)沿いのドライヴを想起させるが、密接な場所や喫煙の時間にヘッドフォンで聞くアルバムとしても楽しむことができる。”Lemongrass” や ”Ginger” は朗らかなアンビエント・トラックで、LaraajiBrian Enoといったニュー・エイジ勢とも共振しているように感じられる。22分という短さのEPの中で、これらの楽曲はやってきては過ぎ去っていく。しかしこの2曲は驚くほどに魅力的で、Swarvyは彼さえ望めばフル・アンビエント・アルバムを作ることができるという証明になっている。

その他にも、1曲目 ”Bones” でSwarvyは我々の不健康なスマートフォンへの没入からの断絶を歌っている。“Waiting for the time that I let go, Feeling like I’m just getting old.(ぼくがそれを手放す時を待っている。なんだかただ年老いていくだけのような気がしている)”と彼は考え込む。次の楽曲 ”Cool” は70年代初期のソウルのようだ。生ドラム、ベース、アコースティック・ギターの上でSwarvyは過去の愛を回想し、曲の中盤で爆発的でロック風のピークを迎える。

ここまでくると、Swarvyが次にどんな音楽を作るのかを当てることは不可能である。『Sunny Days Blue』はそんなことはどうでもいいということを明らかにしている。Swarvyには才能があって、どんな音楽だってやってみれば作れてしまうのである。

By Marcus J. Moore · August 03, 2020

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