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<Bandcamp Album of the Day>Yu Su, “Yellow River Blue”

バンクーバーを拠点にしている音楽家Yu Suはこのデビュー・アルバム『Yellow River Blue』で、ダウンテンポ・ハウスアンビエント・ダブの狭間でゆらぎながら、このアーティストがここ数年の間に確立してきた丁寧に角がとられた音像をはっきりと示した。巧みにレイヤーが重ねられた1曲目 “Xiu” は、跳ねるようなpipaのリードと、朝の霧のように消えては現れるSuの拡散されたボーカルを中心に組み立てられている。彼女の声は、同じくバンクーバーサウンド・マッシャー=Aiden Ayersのドラムと、北京の二人組=Gong Gong GongのJoshua Frankが爪弾くベースによって不釣り合いなほどに強勢の置かれたリズムの上を転がっていく。“Xiu” はアコースティックで、オーガニックで、それでいてダンサブルに感じられる。それはクラシカル・ピアノの演奏家だった彼女が近年成長を遂げる中国のアンダーグラウンド・クラブ・シーンを通過したという、Su自身のミュージシャンとしての経歴を反映しているかのようである。

“Gleam” で彼女はミッドテンポのスウィート・スポットを発見し、アンビエント・ミュージックや急進的なサウンド・デザインからの正体不明の影響をごちゃまぜにしている。“Klein” ではゆったりとした雰囲気を作り、よろめくような疑似トリップ・ホップ的方向にかじを切っている。フィードバック・ノイズと雑味のあるベースラインを背後に抽象的なボーカルのダブが鳴り響く。Suは中国中央部の開封市出身であり、最後から2番めの ”Melaleuca (at night)” でのペンタトニック・スケールを用いたシンセ・ストリングのメロディーなどに微かな中国的要素を聞き取る事ができる。しかし全体的に見るとこのアルバムはメロディーや楽器の使い方、リズムにおいて、どこかの地域にピン留めされることを拒んでいる。

というわけで『Yellow River Blue』という作品は、現代の中国のシーンとの共振をより深めていきたいというYuの姿勢を表している。これは彼女が共同設立者となり、中国から「多様に現れてくる」音楽を発信することを目的とした北京を主な拠点とするbié Recordsからの初となるリリースである。アルバムの最後に収録された廈門市のプロデューサー=Knophaによる “Xiu” のリミックスは、Su自身の音楽、ひいてはbiéとの共同作業が今後どのような形を取るかということにまつわる強力なヒントとなっている。

By Josh Feola · January 25, 2021

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