海外音楽評論・論文紹介

音楽に関するレビューや学術論文の和訳、紹介をするブログです。

Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 13: 140位〜136位

Part 12: 145位〜141位

140. Rae Sremmurd: “No Type” (2014)

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2014年、Rae Sremmurdは当時スーパープロデューサーとしての頂点を極めていたMike WiLL Made-Itに後押しされ、あの伝染力の高い“No Flex Zone”でスポットライトを浴びた。多くの人々が彼らのラッパーとしての能力に疑問を持ちこき下ろしていたが、この二人のベビーフェイスのラッパー兄弟はクラブ・アンセムをその手の中に持っていた。しかしものの数ヶ月の間に彼らは初めてのヒット“No Type”を成功させ、Swae LeeとSlim Jxmmiの二人は一発屋から真のスターに昇格した。この曲の逆らい難い核にはSwaeの浮遊感のあるコーラスがあるが、“No Type”はキャッチーなフック以上のものも持っている。この曲はこのコンビの弾けるようなメロディ/騒々しいエネルギーという陰と陽のバランスを確立したのだ。–Alphonse Pierre

139. Iceage: “The Lord’s Favorite” (2014)

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Iceageは最初の2枚のハードコア的な混沌と苦悩を落ち着かせ、この“The Lord's Favorite”のような緊張感のあるカントリー・パンク路線を選び取った。この曲ではフロントマンのElias Bender Rønnenfeltは高級なワイン、安いメイキャップ、5インチのヒールの魅惑に毒された恋に悩む誇大妄想狂の役を演じている。みすぼらしいクラブの暗闇で、これらの下品な悪徳がRønnenfelt演じる酔いどれの常連を刺激し、彼の神聖な特権についての考えを改めさせる。「結局のところ俺が神様のお気に入りであることは明白だ/そしていま、俺はなんだって望むことができる」と彼は呻く。最後の言葉は彼の口からだらりと流れ出る。このオランダのバンドはロカビリーの嵐を巻き起こし、拳を握りしめるような苦悩以上のものも見せられるというところを示した。–Quinn Moreland

138. Drake: “Hotline Bling” (2015)

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ソーシャル・メディア時代の模倣画家であるDrakeは、スポンジボブのGIFのマッシュアップを作るTumblrティーンのように、音楽と文化的参照をシームレスに交換する。そしてこの曲は彼のヒップホップ界の最高のミーム大王としての地位を確実なものにした。Drakeは当初この曲をDRAMの“Cha Cha”のリミックスとして捉えていた。プロデューサーのNineteen85はTimmy Thomasの1972年リリースのソウル・クラシック“Why Can't We Live Together”をフリップさせて信じられないほどキャッチーなシンコペートされたドラム・シークエンスを作り出している。ヴィジュアル・アーティストのJames Turrellの2013年のインスタレーション作品“Breathing Light”をパクった、パステル・トーンのネオンで照らされたインスタ映えしそうな部屋が登場するビデオのおかげで“Hotline Bling”は爆発的にヒットしたが、そこでDRAMとDrakeはクレジットを巡って争った。数ヶ月のうちに、ネオソウルの女教皇Erykah Baduは「hotline」のコンセプトだけでミックステープをまるまる一枚制作し、現代社会における電話の役割に関する学術論文に仕立て上げた(しかもDrakeそっくりのAubreyというラッパーをフィーチャーしている)。まさにモダンアートのムカデ人間であるが、この“Hotline Bling”の最大のレガシーはこの曲がインスパイアをした作品/インスパイアされた作品との切手も来れないような繋がりなのではないだろうか。–Matthew Ismael Ruiz

137. Yaeji: “Drink I’m Sippin On” (2017)

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このブルックリンで最も刺激的は若きエレクトロニック・アーティストは意図的な秘匿でキャリアをスタートさせた。Yaejiが朝鮮語で歌うのは当初他人に自分を理解されたくないからだった。その後彼女はこの茶目っ気がありエレガントな音節を気にいるようになった。彼女がブレイクするきっかけになったシングルはその愛情の点で明らかである。彼女は眠気を誘うシンセとトラップ風のドラム、冷たいヴォーカル・トーンの上で徘徊する。彼女の柔らかでふしだらな言葉たちがゆったりとした調子で歌われる。彼女が朝鮮語で「そうじゃない」と何度が呟いたあと、ブリッジでは英語も少し顔を覗かせる(適応というよりは独り言のようだ)。愛おしく、きらめくような、穏やかなミスコミュニケーションの瞬間。でもあの弾力のあるベース・ドロップ。これは間違いない。–Stacey Anderson

136. CupcakKe: “Duck Duck Goose” (2018)

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受信した人のストレージがいっぱいになるほどの高画質でヌードを送ること。チンコを自由の女神に見立てること。「アソコのおかげですぐにぐっすり寝れる/チンコにまたがって、『おやすみなさいおつきさま』を読んであげる」というライン。これらは“Duck Duck Goose”でのCupcaKKeの、中でもまだ「おとなしい」瞬間である。このR指定のジョークの終わりなき弾幕のなかで、このシカゴのラッパーの下品なユーモアがでは存分に発揮されている。また、この曲は彼女が誰よりも上手くスピットできること、エリート・ソングライター並にウィットや駄洒落、鮮やかな比喩をヴァースの中に織り込むことができることを示している。CupcakKeはこれら全てを、パンパンになった汗臭いクラブ用のビートに乗せるのだ。それこそ、彼女の素晴らしさを堪能するのに最適な場所である。–Alphonse Pierre

Part 14: 135位〜131位