Pitchforkが選ぶテン年代ベスト・ソング200 Part 14: 135位〜131位
135. Robyn: “Honey” (2018)
“Honey”はRobynの楽曲の中でも淫らな部類の一つである。脈打つハウス・ビートにセットされた、午前3時のブーティー・コール。この曲はゆっくりと流れ、ガタガタ鳴るハイハットとストロボライトのようなシンセサイザーがダンスフロアに流れ出していく。一方で、このスウェーデンのスターは多くの余白を使って自分のヴィジュアルを花開かせる。ラメ入りの「糸を引く唾液」、歩道に光るエメラルド。音節の一つ一つがタフィーのように伸びていて、彼女の声はウィスパーの真上で滞空している。まるで聴き手に少し前のめりになって聴いてもらいたいかのように。しかし彼女のメッセージはわざわざ叫ぶ必要がないほどに明白である。一人で踊ってから10年が経ち、Robynはディスコへの凱旋を果たした。しかし今回は、彼女が一人で帰ることはない。–Madison Bloom
134. Kamasi Washington: “Truth” (2017)
Kamasi Washingtonは瞑想や彫刻、設計のための時間を必要とする芸術家である。彼の楽曲はそれぞれが醸造された感情の島であるが、そこは彼の発想が脈打つ場所で、そこでは一つ一つの曲が彼の作品を際立たせる官能的なトレードマークをつけられている。この“Truth”はこのサックス奏者の音楽的分野の中で、最も緻密で、そして恐らくもっとも神聖な部類である。湿ったベース、神々しいオーケストラの叫び、巨匠・Pharaoah Sandersを思い出させる興奮と純粋なアドレナリン。それはWashington自身の冒険の旅である。よりファンキーで、アフリカ的で、セネガルのダシキを着て楽しむような音楽。まあ、キングのブツということだ。
もともとは2017年のWhitney Biennialの展示に合わせて作曲され、後に『Harmony of Difference EP』の最後に収録されたこの“Truth”は、スピリチュアルな/音楽の/人間の旅についての曲である。この曲は芸術的な指揮がかなり複雑に重なりあっていて、それは詩人・Wanda Coleman、映画監督・John Singleton、ヴィジュアル・アーティストのBetye Saar、プロデューサー・DJ Quikなど、LAのブラック・コミュニティの中にあった習俗を掘り起こしてきた多くの歴史家たちに肩を並べる偉業である。じっくり聴けば、人生の緊張感と急展開、愛の感情的速度、息をすることのドラマが聴こえてくる。–Jason Parham
133. Future: “Mask Off” (2017)
Futureの音楽は放蕩や耽溺を褒め称えることで、それらが生み出す悲劇を脚色していることが多い。それは決して達成が簡単な作戦ではないが、このアトランタのスターは現代のラップ界の中で最も才能に溢れた名文家の一人なのだ。彼のチャート最高位を記録した“Mask Off”はとにかく突飛である。彼はサビで“molly”と“Perocet”という単語をタイトルよりも多い回数繰り返す。しかし彼はドラッグ乱用の深淵をつなぎ合わせることで応急処置を施そうとはしている。Futureはリーンをたった2つの単語で恐ろしく表現している。「俺のギロチン」であると。そんな中、マーティン・ルーサー・キングに捧げられた1978年のミュージカル『Selma』内の“Prison Song”から引用されたフルートのサンプルが彼のボーカルの周りを這いずり回る。「ムショの部屋は凍えるほど寒い」という“Prison Song”のボーカルをスクリューした音源がアウトロで歌われる。“Mask Off”はFutureの楽曲の中でも最もマンガのような曲であるが、現実が危うい勢いで現実感を失っていっている今日において、それは現実を要約する最良の方法なのかも知れない。–Ross Scarano
132. Kurt Vile: “Baby’s Arms” (2011)
“Baby's Arms”は、Kurt Vileの怠け者の禅のような人格が、いきなり焦点をパリッと合わせたサウンドである。2011年の作品『Some Ring For My Halo』は、それまでリヴァーヴのカーテン後ろに隠れていたこのフィラデルフィアのソングライターの再スタートのような作品だった。彼のバンド・The ViolatorsやプロデューサーのJohn Agnello、そしてその他の参加者たちと作業を行い、Vileは初期の作品のぼんやりとした雰囲気を透明なフィンガー・ピッキングと、ボソボソつぶやいていた警句を愛する人へ捧げる詩と取り替えた。“Baby's Arms”はクールでありスウィートであり、親密で反響している。囁きを微かに超えたものでありながら、それは全力のように聴こえるのだ。–Jesse Jarnow
131. Chromatics: “Kill for Love” (2012)
Johnny Jewelはその完璧主義故に多くの批判を受けることがあるが、“Kill for Love”のような曲を聞くと、このものすごく要求が高いことで悪名高いChromaticsの首謀者がだいぶ理性的に見えてくる。グループの2012年のアルバムのタイトル・トラックであるこの曲は彼らが細密画法を目指した楽曲である。幸せを追い求める倦怠感のサウンド。Ruth Radeletの見かけによらず無感情なボーカル・パフォーマンスは、習慣の中に潜んでいる新しい物事への切望を歌い上げる。「水を飲んだら大丈夫な気がした/ほぼ毎晩薬を飲んでいた/心のなかでは、変化を待ち続けていた」。ひび割れたシンセは晶洞を分かつほどの鋭さを持っている。ギターはめまいのようで感傷的でもあり、溶けていくように反響していく。シンバルは止まることなくがたがたいい続ける。不安の真っ只中にいることと傷ついていることは共に同じく自然に生じる衝動である。そこでは、一時的な逃避はいかなる時もなんの約束もしてくれないのだ。–Anna Gaca