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<Bandcamp Album of the Day>XIXA, “Genesis”

初めて聴く人であっても、このトゥーソンを拠点とするロック・バンドであるXIXAがなぜ自分たちの音楽を「神秘的な砂漠のロック」と称しているのかを理解するのに掃除冠はかからないだろう。彼らの2作目となる『Genesis』の1曲目 “Thine Is the Kingdom” は謎めいていて壮大な雰囲気をすぐさまに作り上げる。羽ばたくようなギターと舞い上がるようなボーカルによって、この楽曲はソノラ州の広大な土地の広がり、白亜質の赤や灰色、乾いた低木やサボテンと言った光景を思い起こさせる。キビキビとしたシンバルに寄ってアクセントのつけられた、この楽曲のシャッフル・ビートはその二重性へのこだわりを表している。『Genesis』を通して、XIXAは活気と忍耐のバランスを近郊を見出していてーー居心地の良い、ダラダラとした雰囲気の『リオ・ブラボー』を想起させるーー、それは革新的な結果を生み出している。

XIXAはChicha(ペルーのサイケデリックなクンビア)からTejanoといった多くのラテン音楽参照元として引っ張ってきているが、それらの全てはたとえアップテンポな曲であったとしても考え抜かれたシリアスなサウンドとしてインストールとしている。それによってライトでアップテンポなLos PirañasSonido Gallo Negroといったアクトとの差別化として働いている。そのムードのいち要因としてあげられるのがGabriel Sullivanのボーカルである。“Nights Plutonian Shore” では、彼の低音域のクルーンの砂利ついた感じが、このハンド・パーカッションとピアノの装飾で満ちた楽曲に生き生きとしたドラマの感覚を付け加えている。

このバンドの前作やソロとは対照的に、『Genesis』には深いコクが感じられる。“Land Where We Lie” でのまばゆい合唱隊のコーラスだったり、“Soma” での微かにきらめくサイケデリックな渦巻だったり、“Mat They Call Us Home” のサーク・ロック風のギターだったり、そういう楽曲のディテールがソングライティングのタイトさによって光り輝いている。『Genesis』は内省的でじわじわと盛り上がるカントリー風 “Feast of Ascension” の、騒々しいギターでクライマックスを迎える。やがて、それはゴボゴボと流れ出るようなヒス音へと崩壊していく。この焦げ付くような厳しい旅にはうってつけのシネマティックなエンディングである。

By Joshua Minsoo Kim · February 17, 2021

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