海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Ivo Perelman and Nate Wooley, “Polarity”

テナー・サックス奏者=Ivo Perelmanとトランペッター=Nate Wooleyが共作した『Polarity』は二重即興奏の可能性を探求する1枚である。これまでに、WooleyはAnthony BraxtonJohn ZornIngrid Larubrockといった面々と演奏し、Perelmanは自身のアンサンブルを率いてWilliam ParkerMatthew Shippといった現代ジャズの巨人と演奏し名を上げてきた。今回この2人は音楽の自然発生という営為を深く掘り下げるために手を組んだ。

アルバムのオープニングを飾る “One A” では、この2人のミュージシャンが楽器を使って部屋の中の空間を探り、感じ取っている。WooleyとPerelmanのメロディー・ラインはお互いに向けて突進していき、やがてもつれ合って螺旋を作り上げていく。“Two A” では、Perelmanがスウィングしたシンコペーションの効いたモチーフを持ち出し、そこにWooleyが加わって、互いに撃ち合いながらやがてそれぞれの楽器の最高音へと上り詰めていく。

『Polarity』には好奇心のような感覚が常に流れている。PerelmanとWooleyは音を使って互いにコミュニケーションを取っている。ふたりとも積極的に聞き手にまわり、それに反応し、リアルタイムでお互いに返信しあっている。ここには「リーダー」はいない。音楽を演奏するという行為自体が導きとなり、2人の演奏家たちは自然の力に身を任せている。