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<Bandcamp Album of the Day>Slowthai, “TYRON”

自身のデビュー作『Nothing Great About Britain』において、ノーサンプトンのラッパー=Slowthaiはネグレクトされてきた世代の怒りを無秩序でパンクに影響されたヒップホップへと昇華させた。このアルバムはSlowthaiの貧しい労働階級の出自だけではなく、英国政府の数々の失敗とともに取りざたされることが多かった。そしてこの作品が英国の中流社会の荒涼とした描写にもかかわらず魅力的に感じられたのは、Slowthaiの狡猾でコミカルなウィットがあったからである。『TYRON』はより広く、音楽的もより野心的である――Slowthaiの精神世界へと飛び込んでいく作品だとすれば自然な成り行きであるが。

アルバムの前半は、Slowthaiに対して期待するようなノイズと騒がしさで満ち溢れている。”45 SMOKE” は前作と同じようなカリスマ的な、「手に負えない」魅力が感じられるが、『TYRON』での彼のアティテュードはより厚かましく、よりパンクになっている。歌詞は希薄であり、楽曲の焦点はSlowthaiが808の鼓動の上で鳴らす、とりとめのないディストピア的なノイズに当てられている。しかしアルバムの後半はどこか哀愁めいたムードが漂う。霧のようなアトモスフェリックな ”feel away" では、そのようなノイズは取り払われ、Slowthaiはある関係性の終わりを迎える。ゲスト・ボーカリストのJames Blakeが亡霊がとりついたようなアウトロでこう歌う。「夢よ、ここにきて僕を救ってくれ/ここにきて、僕を見て/どこへだって連れて行ってくれ、喜んでついていくから」。

『TYRON』にはこのような瞬間が多く収められ、Slowthaiは彼の歌詞の切れ味を内側に向けている。「うんざりするような、何も変わったことのない一日/俺は頭の中で死んだような気分、電子レンジに入れられたような気分/路地で「サイモン・セイ」を遊んでいた/Tyronは橋から飛び降りたぜ、お前に同じことができるか?」と彼は ”nhs" のフックで繰り返す。彼のすり減ったような、砂利っ気の多いボーカルのトーンが歌詞の生々しい感情に重みを加えている。『Nothing Great~』でのSlowthaiは社会の病理にメスを入れていたが、小作では彼は自分自身が誰なのかということと折り合いをつけようとしている。彼は皮肉屋のいたづらっこというポーズをとってはいるが、『TYRON』では地震の悪魔としっかり向き合っている。それを完全に打ち負かすことはできていないかもしれないが、アルバムの終わりでは彼は問いよりも答えを多く持っているように思える。

By Jesse Bernard · February 10, 2021

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