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<Bandcamp Album of the Day>Boris & Merzbow, “2R0I2P0”

Borisには不作の年というものがない。この世紀が始まった時から、このメタル界で最も大胆なバンドの一つに数えられる彼らのディスコグラフィーは1年に1度の氾濫を起こし、カレンダーはスプリット、シングル、コラボレーション、コンピレーションで埋め尽くされ、1枚の通常のアルバム以上のリリースを欠かさず行ってきた。彼らは2020年の呪いに敗北主義ではなく、その特徴的な反抗をもって立ち向かい、ここ数年で最も切迫したアグレッシヴな作品をリリースした:7月に発売された自主制作・自主リリースのLP『NO』は歓喜に満ちたパンク的怒りを過積載した爆雷であった。さらに彼らのオンラインのアーカイヴも、主に壮麗なライヴ・アルバム『Pink Days』によって構築されていった。

 

今年を締めくくる一発として、彼らはMerzbowとの長年のパートナーシップを復活させた。昨年から制作されていたという『2R0I2P0』(「2020」と「RIP」が握手を交わす手のように織り重なっている)は繊細で美しい乱闘であり、Merzbowはまるで屑鉄置き場の工場長が銅像を粉々にするように、これらのメタル・アンセムに彼のエレクトロニックな急襲を仕掛けていく。熱心なBorisのファンであればこれらの楽曲のタイトル全てに見覚えがあることだろう:昨年Third Manから出た『Love & Evol』から6曲、そして ”Journey” はBorisのポップ好きな従弟分=The Novembersとのオブスキュアなスプリットに収められたゴージャスな子守歌である。そして9番目に名を連ねるのは彼らの名前の由来となったThe Melvinsによる組曲であり、ここでは地獄めいた叫び声と焼き付けるようなノイズの渦巻で埋め尽くされている。

この二股に分かれたような感覚――二つの全く異なるアクトが同時に演奏し、口喧嘩をしているようでさえあるような――がこの『2R0I2P0』を束ねている概念である。Merzbowは ”Coma” の弧を描くようなリフをカラフルなノイズの酸性雨で攻撃している:彼はまた、豪華絢爛な ”Journey” をごみの圧縮機へと放り込んだのち、その残骸を溶接でつなぎ合わせようとしているかのようである。『Love & Evol』は、まるでスペア・パーツだけでくみ上げられたような、支離滅裂でありながらどこか筋の通ったような作品であった:そこに収められたこれらの楽曲がこのシームレスな感情の爆発の中で再解釈されているのを聴くのは爽快である。このコラボレーションもそのアルバムと同じく、”Shadow of Skull” で締めくくられる。MerzbowBorisにとって、これは相互に閉鎖的な耽溺であり、2020年のために建てられた完璧な墓石である。安らかに眠れ。

By Grayson Haver Currin · December 02, 2020

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