海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Nahawa Doumbia, “Kanawa”

Nahawa Doumbiaの音楽家としてのキャリアをこの10年の間2度のリイシューで祝福してきたAwesome Tapes from Africaから、マリのワスールー音楽をけん引する彼女の新譜が登場する。この『Kawana』はDoumbiaの40年間に及ぶ音楽の旅の最新のステージである。この40年の間、生々しい歌声と繊細なアコースティック・ギターが聞ける『La Grande Cantatrice Malienne Vol 1』から、オーケストレーションを総動員し電子化したサウンドの『La Grande Cantatrice Malienne Vol 3』までの大きな振れ幅の中を歩んできた。アンサンブルを従えバマコで録音され、長年の共同作業者であるN'gou Bagayokoの手によってプロデュースされたこの『Kanawa』には、Doumbiaがマリで最も優れたシンガーの一人にまで上り詰めたすべての要素が含まれている:彼女の力強く生々しい声は感情と温かさを伝え、彼が生まれ育ったブグニのディダディのリズムが鳴り響き、彼女はジェンダーの平等、平和、そして社会的正義を情熱的に訴えかける。

このアルバムはDoumbiaの静かながら切迫したボーカルがアコースティック・ギターとカリニャン(マリの伝統楽器)の通常のビートの上で漂っている場面から始まる。やがて敏捷なンゴニ・ギター、ベース、そしてバッキング・ボーカルがなだれ込んできてペースが上がっていく。”Didadi” はとにかく元気いっぱいでパーカッシヴなディダディのリズム――マリの南西でよくみられる両面張りの太鼓=ディダディドゥンドゥンで演奏される――をを聴かせる一方、”Hine” や ”Kanawa” のような楽曲ではそういったサウンドがマリの現代のポップと統合されていく。

ダンスフロア向けのリズムとは裏腹に、”Kanawa” は命の危険を顧みずヨーロッパへ渡ろうとする何千ものマリの若者たちについて歌っている。「多くの子供たちが海で命を落とし、中にはサハラ砂漠を横断している途中に亡くなってしまうものもいる」とDoumbiaはライナーノーツの中で語っている。「彼らには自分たちの国にとどまって働いてほしい。そうすればお互いを助け合いながらこの問題に対する解決策を見つけることができる。これはメッセージ。だからこそこの曲をアルバムのタイトルに選んだし、みんなにはそこから何かを感じ取ってほしい」

By Megan Iacobini de Fazio · January 19, 2021

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