海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Jahari Masamba Unit, “Pardon My French”

Madlibの『Medicine Show #7 - High Jazz』にはJahari Massamba Unitというバンドが登場する。その名前はまるでStrata-East Recordsから出ていた大昔のアンサンブルのようである。しかし、実際これはMadlibKarriem Rigginsという、ファンク、ヒップホップ、ジャズをブレンドしスリリングな作品を作り上げる2人のプロデューサーによるユニット名である。そのデビュー・コラボレーション作品『Pardon My French』はPharoah SandersHerbie Hancock、Lonnie Liston Smithといった、一つのジャンルに縛られることなく活動してきたジャズの先人たちから影響を受けているように感じる。

ビート・テープのようでもあり、スピリチュアル・ジャズのようでもあり、ブラック・クラシカル・ミュージックのようでもある『Pardon My French』は、幾重にも重ねられたドラムや西アフリカのリズムもあって、SandersやSmithの昔のアレンジのような温かさにも似たものを感じる。その意味で、『Pardon My French』は70年代初頭のどこかを舞台にし、滑るようなシンセと大量のパーカッションがアフロセントリックなオーラを醸し出している。“Deux Fakes Jayers (Aussi Pour Le Riche Enculé)” や “Du Morgon Au Moulin-À-Vent (Pour Duke)” を聴けば、楽器陣は宙に浮いたように舞っているのがわかるだろう。しかし、歌声がそれをしっかりと地上につなぎとめている:前者ではブラックネスの美しさについてのスポークン・ワードのしが朗読され、後者では愛や苦難についての抽象的な散文が前面に出ている。

もっとコンテンポラリーなトラックもある。“Trou Du Cul (Ode Au Sommelier Arrogant)” や “Etude Montrachet” はブンブンと唸る電子ドラムとかすかな管楽器とシンセを伴ったファンク仕込みのブレイクビーツ。最後の曲 “Hommage À La Vielle Garde (Pour Lafarge Et Rinaldi)” はおそらく、このユニットのクリエイティヴシナジーを最もわかりやすく伝える例である。リラックスした、頭をゆっくりと振りたくなるようなグルーヴはMadlibの『Shades of Blue』やRigginsの『Alone Together』に入っていてもおかしくないものだ。つまるところ、『Pardon My French』は現在の感覚を強く持ちながら歴史的な経典の中をキビキビと歩くような、広大で胸がすくような作品なのである。

By Marcus J. Moore · November 25, 2020

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