<Bandcamp Album of the Day>Dezron Douglas and Brandee Younger, “Force Majeure”
ニューオリンズのコンゴ・スクエアでのアフリカ系奴隷たちの集会の中で生まれ、ナイトクラブや世界中のフェスティバルで発展していったことから、ジャズというのは生来公的な、社会的な音楽である。ハーレムを拠点とするハープとベースのデュオ=Brandee YoungerとDezron Douglasにとって、Covid-19と公的空間のロックダウンは、観客との、そして楽器奏者同士のつながりを保つための方法を模索する挑戦となった。
毎週のライブ配信がもととなり、リビング・ルームで1本のマイクで録音された『Force Majeure』は、この2人が偉大なジャズの楽曲と、親しみやすい現代ポピュラー・ソングの中で自由に泳いでいるような、そんな作品である。アルバムは “Coffee (Intro)” という短い、家に閉じ込められた人たちへのチェック・インから始まる。Douglasは遊び心たっぷりにこう宣言する:「もしもあなたがまだ正気を失っていないのだとしたら、神は善き人である。そしてもしもあなたが正気を失ってしまったとしても、それもまたクールなことだ!」
オープニング・トラックに続いて、YoungerとDouglasは即座にAlice Coltraneの忘れがたい “Gospep Trane” へとなだれ込んでいく。Douglasのトーンは丸みを帯びていて、満ちていて、温かい:Youngerのハープはドリーミーでときにメロディックだが、同時にオリジナルのColtraneのピアノのようにスウィングしていてパーカッシヴでもある。YoungerとDouglasによる “Never Can Say Goodbye” や “You Make Me Feel Brand New”、“The Creator Has A Master Plan” と言ったクラシックの解釈は豊かで、深い感情に満ちている。世界から一度自分を切り離し、その才能を楽器に注ぎ込むことで、YoungerとDouglasはジャズとは何たるかというものの核心、理想とは程遠い状況においても繋がりを作るというところに到達している。
By John Morrison · November 30, 2020