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<Bandcamp Album of the Day>Khruangbin, “LateNightTales: Khruangbin”

Khruangbinが作家A. W. Wildeによるアーティストのキュレーションによるコンピレーション・シリーズ『Late Night Tales』に参加したこの作品は、世界中への旅の口頭伝承である。その始まりと終わりはこのエクスペリメンタルなグルーヴをもつ3人組の故郷:ヒューストンである。Carlos SantanaとAlice Coltraneによる “Illuminations” がストリングスとスペースで部屋を浄化すると、3人はKhruangbinの『Con Todo el Mundo』の酩酊感あるダブ・リミックスも手掛けたヒューストンのプロデューサー=Brilliantes del Vueloの “I Know That” の合図を出す。詩人のTierney Maloneが、Geoffrey MullerによるバンジョーErik Satie『Gnosssiennes』の上でアフロフューチャリスト的な詩(「私はSun Raその人から宇宙服を借りた」)を朗読し、すべてを故郷に持ち帰る。

悲劇のパキスタンボリウッド・スター=Nazia Hassanによる80年代ディスコ “Khushi” から韓国のSanullimによるファンキーな “Don't Go”、そしてナイジェリアのRastafarian Maxwellによるシルキーな “I Like It” に至るまで、Khruangbinがこれら楽曲一つ一つで攻撃的な演奏をしているところが容易に想像できる。もしくは、少なくともKhruangbinによるKool & the Gangの宇宙を歩くような名曲 “Summer Madness” の驚くべきスタジオ・ヴァージョンを聴けばそれがわかってもらえるだろうか(彼らはこの夏リリースした『Mordechai』の中の “Connaissais de Face” ですでにJustine & the Victorian Punkの会話調の “Still You” への敬意を表している)。このような発掘音源物では嗜好こそが鍵となってくるが、Khuruangbinの『Late Night Tales』は有機的で、全体論的で、ほぼシームレスに繋がっていく、真面目に聴くにはとっくのとうに期限が切れてしまったオブスキュアな楽曲のコレクションである。

By Richard Gehr · November 24, 2020

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