海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Pink Siifu & Fly Anakin, “FlySiifu’s”

ラッパー=Pink SiifuFly Anakinコラボレーション・プロジェクトの最初のスキットは、二人の人気上昇中のMCがFlySiifu'sという架空のレコード・ショップを経営していて、それに続くこの22曲入りのアルバムは昔ながらのレコード漁りという行為への愛のこもったオマージュのような作品であることをリスナーに伝えている。MadlibOhbliv、そしてAnimossといったプロデューサー陣が埃っぽく、ジャズ的なアンビエンスを湛えた再利用されたループを提供し、それらのビートには滝のように流れていく鍵盤、巧みに切り取られたスネア、そして雑音混じりの粘っこいベースラインなどが織り込まれている。ときに、このアルバムは90年代後半のThe Ummah(Q-TipAli Shaheed Muhammad、そしてJ Dillaからなるプロダクション・ユニット)の作品を思い起こさせる(この『FlySiifu's』のスキットの中でも一人の客がかのデトロイトのプロデューサーによる『Welcome 2 Detroit』を注文している)。

このリラックスした、酩酊感のあるプロダクションを背景に、二人のMCの朦朧とした声はこれらのトラックへとうまく染み出すような録音とミックスが施されている。この手法が『FlySiifu's』に親密な雰囲気を与え、リスナーたちはこの二人のラッパーによる深夜の電話での会話を聞いているような感覚を覚える。「これを夜明け時に書いている/いい感じのヴァイブ/そしてゲームの筋書きも同じ夜にかきあげた」とAnakinは “Richard Pryor” のくすぶった日のようなベースの音の上でラップする。このラインが『FlySiifu's』を魅力的なヒップホップ・ムード音楽として見事に要約してみせている。

By Phillip Mlynar · November 11, 2020

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