海外音楽評論・論文紹介

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<Bandcamp Album of the Day>Star Lovers, “Boafo Ne Nyame”

1987年、シンガーのK. Aduseiとやがて有名なレコード・プロデューサーとなるFrimpong Mansoは、多くの偉大なハイライフ・ミュージシャンがスターダムへの階段を駆け上がったAccraの音楽スタジオで出会った。その2人は共に、ガーナで最も広範なハイライフのアルバムの一つである『Boafo Ne Nyame』を作り上げることになる。この作品は植民地支配時代以前の伝統的なスタイルと、アフリカ大陸を飲み込んでいったファンク、ポップ、レゲエ、そしてシンセの影響を統合したノスタルジックな作品だった。ハイライフという名前の由来は植民地支配期にその音楽がガーナのエリート階級のために演奏されたからである。高級ジャズ・クラブでこのアフリカと西洋の折衷的な音楽を聞くためにはフォーマルな格好をすることが求められたのである。その後1957年にガーナが独立すると、この音楽はセプレワなどの伝統的弦楽器の代わりにギターを用いてガーナ的なサウンドを作り出そうとする「ギター・バンド・スタイル」によって大衆のものとして再生した。『Boafo Ne Nyame』において、K. Aduseiはハイライフのリスナーが好む3つのトピック、つまり信仰と家族、そしてお金についての機知に富んでいて哀愁のある歌詞と共にそのサウンドを体現している。

タイトル曲である “Boafo Ne Nyame”(“God is a Helper” の意)は、人間の破壊的な行動に対して神の介入を願うスロウなレゲエ〜ファンク〜ゴスペル・バラードである。Aduseiのくだけた口調で歌うスタイルの中で、彼は「お金がこの手に落ちてきたかと思えばそれは燃えてしまって、私は神にこの私を追いかけてくる炎を消してくれとお願いするのです」と叫ぶ。ドラム、シンセ、ギターの弦による鼓舞するようなビートは、彼の歌詞の中の自暴自棄な雰囲気と比べるとユーモラスである。“Asem De Ye So” (“Our Problems Are On Us” の意)はファンクやソウルに深くルーツを持つ(ギターリフにその影響を聞いて取ることができる)、速いペースのダンス・ジャムであり、そこにディスコ的なテーマやハイトーンでメロディックなバッキング・ボーカルが乗っかる。冒頭の2音のドラムのフィルに続いてエレクトリック・ギターのメロディックな2フィンガー・ピッキングの音色は、アフロ・ヘアーとベルボトムで溢れかえっていた当時のダンスフロアを沸かしたであろうということを容易に想像させる。8分間のこの楽曲はこのアルバムの中で最も長く、最もアップビートな楽曲である。

ボーナス・トラックの一つ “Abusua”(“Family” の意)では、Aduseiは少しばかりのポップさと共にファンクとソウルを再び持ち出している。Asieduは歌う、「お金を持っていればいるほど、家の中から多くの家族が出てくるようになる」と。これがハイライフの美しさである:ファンキーなリズムと面白おかしい歌詞が社会の姿を映し出し、もっと良くなろうという気持ちにさせてくれるのである。

By Ama Adi-Dako · February 04, 2021

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