<Bandcamp Album of the Day>Bully, “SUGAREGG”
今年のはじめ、コロナウイルスの第1波によるロックダウンでBullyの次の作品のプロモーションやツアーの計画がストップしてしまった時間を埋めるために、Alicia Bognannoは楽器をすべて自分で演奏し、ミックスをリビングで終えたNirvanaの “About A Girl” のカヴァーを発表した。3月にリリースされたその楽曲では、BognannoはKurt Cobainによる最も直截的な「ポップ」ソングをガツガツした、ダウンチューニングされたドッペルゲンガーに作り変えてしまっているが、それでも原曲のBeatlesに捧げられたフッキーで甘美な要素を保っている様を聞くことができる。素晴らしい出来だった。
その削り取るような荒々しさと甘さの完璧なバランスは、このBullyの3作目となるフル・アルバムであり最高傑作である『SUGAREGG』でも随所に聞くことができる。彼女のソングライティングとギターのスタイルは粗野でねじ曲がったままであるが、Bognannoの描くヴィジョンは、2017年の『Losing』よりも商店があっているように感じられる。『Losing』では楽曲は決して振り子運動を描かず、ギターは少し静か過ぎで、それに比べてBognannoのKim Shattuck風のパワフルで耳障りなヴォーカルは前に出すぎていた。女性の業績を男性によるノブの微調整で囲ってしまうのは気が進まないが、ひょっとするとプロダクションをJohn Congleton(St. VincentやSleaterl-Kinneyなどを手掛けたプロデューサー)に委ねることにしたことによってBognanno――彼女自身、これまでのBullyの作品を手掛けてきた才能あふれるプロデューサーでありエンジニアであるが――が自身の創作的な衝動に集中し、『SUGAREGG』の楽曲を気ままに作れる環境を作り上げたのではないだろうか。Bullyの音楽をこれほどまでに本能的興奮に結びつけるような、手加減のない、喉から絞り出されるようなクオリティが全く失われることなく我々の耳に届いてくるのである。
『SUGAREGG』は、1曲めの “Add It On” の最初の擦り切れたコード1音が鳴らされた瞬間からあなたの顔の目の前に現れる。そしてBognannoが楽曲の中で怒り、不安、そして反抗といった感情の中を探検し、自身の容赦ないギターのアタックと全力で喉から絞り出すようなボーカルを混ぜ合わせ、その2つが決して互いに支配的になることのない強力で強固な音の壁を作り上げていく中で強烈さを増し続けていく。たとえアルバム中盤のハイライト “Stuck In Your Head” において自分自身とのコール・アンド・レスポンスをやる中で、「ただテンポを上げていきたいだけなんだ!」とふざけた様子で歌うときでさえ、である。Bullyの音楽的パレットの主な材料はグランジであり、このように音を下げた楽曲は時に週末感を感じさせることもある。しかしBognannoの精神は日差しのように明るく、暗い曲調の楽曲も喜びと陽気な感覚で満たしている。もしかしたら以前は彼女は私達に向かって叫んでいたのが、今では私達と一緒になって叫んでくれているのかもしれない。
By Mariana Timony · August 20, 2020