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<Bandcamp Album of the Day>Marcos Resende & Index, “Marcos Resende & Index”

Marcos Resende & Indexの1976年のセルフタイトル作はこれまでリリースされたことがなく、それはこのブラジルの有名ジャズ・ファンク・バンドの出発点が不明瞭なままであることを意味していた。これらの楽曲は、サウンド・エンジニアの「ブラジルのRudy Van Gelder」ことToninha Barbosa(AzymuthMarcos Valleを手掛けた)と共にリオのSonoviso Studiosで約1ヶ月の間に録音された。しかしこのリリースが実現することはなく、2年後にこのグループが高く評価されたアルバム『Festa Para Um Novo Rei』を発表したあともその事態は変わらなかった。その代わり、このテープはResendeの手元に残り、日の目を見る機会を伺っていた。2018年、彼はこのテープをFar Out RecordingsのJoe Davisに手渡した。Joeは古いブラジル音楽に注目を集めることを生業としている。2年のあいだFar Outと共にテープのレストア作業に取り組んだあと、悲しいことにResendeは昨年11月、73歳で亡くなってしまった。この作品がついに日の目を浴びることになり、このリリースはResende自身の歴史にとってだけではなく、ブラジル音楽の歴史にとっても極めて重要なピースとなった。

『Marcos Resende & Index』に収録されているのは、キーボードにResende、ベースにRubão Sabino、ドラムにClaudio Caribé、テナー・サックス、ソプラノ・サックス、フルートにOberdan Magalhãesを迎えたバンドによる、ファンキーで自由奔放な6つの楽曲である。ミュージシャンの間にはわかりやすく、気楽なケミストリーが共有されている。Resendeの鍵盤は頻繁にアレンジの前面に飛び出してくる。彼のメロディックな演奏と、ストリングを模した柔らかなコードがミックスに出たり入ったりしながら、プロジェクト全体に夢見心地な雰囲気を与えている(Jack McDuffが同年にリリースされた『Sophisticated Funk』で同じような雰囲気を用いていた)。

楽曲それ自体は奇妙で、予測不可能な道のりをたどっていく:例えば “Praça da Alegria” は猥雑なファンクから70年代シットコムのような切れ味へと急旋回していく。Resendeはこのうち5曲を手掛けているが、その中には彼がポルトガルに暮らしていた頃に惹かれたというプログレッシヴ・ロックからの影響も聞き取ることができる。“Nergal” では、Resendeは多くの種類の電子ピアノとアナログ・シンセサイザーを演奏し、追加のベース奏者、ギタリスト、パーカッショニストをスタジオに招いて陶酔状態を作り上げている。しかし、最も実験的な楽曲は最後に収められた “Behind The Moon” で、他の惑星からやってきた奇妙な熱狂のような、Brian Enoのアート・ロックとGiorgio Moroderのうだるような暑さのポスト・ディスコの間の点をつなぎ合わせるようなごちゃまぜのテクスチャを持っている。この楽曲は『Marcos Resende & Index』の最も本能的な瞬間に、長らく聴かれることのなかった特異な楽曲たちに飾りボタンを縫い止め、世に送り出している。

By Dean Van Nguyen · January 27, 2021

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