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<Bandcamp Album of the Day>Michael Olatuja, “Lagos Pepper Soup”

ロンドンで生まれ、ラゴスで育ち、現在はニューヨークを拠点に活動しているMichael Olatujaのアルバム『Lagos Pepper Soup』は、ブラック・アメリカン・ジャズと西アフリカのポピュラー音楽の間で長いこと交わされてきた大陸間の対話に、新鮮で革新的な切り口を提示している。アルバムの幕を開けるのは簡潔ながらぐっと聴き手を引き付けるような”Even Now Prayer”で幕を開ける。そのアップテンポなバックビートと一掃するようなシンセは4heroやNew Sector Movementsといったロンドンの先駆者たちを思わせるソウルフルでユートピア的なサウンドを思わせる。ナイジェリアのレジェンドAngelique Kidjoの輝かしいパフォーマンスとギタリストのLionel Louekeによる想像力豊かなソロをフィーチャーしたドライヴ感あふれるアフロビート曲、”Lagos Pepper Soup”で一気にハイ・ギアに切り替わる。”The Hero's Journey”はOlatujaの作曲面の天賦の才能を示す広大で楽しげな一曲。こちらの想像力を広げてくれるような、ストリングスが多用されたこの曲ではOlatujaはバックでほのかで抑制された演奏を聴かせる一方で、ジャズ・ヴァイオリニストのRegina Carterの演奏が際立って聞こえる。インスト曲”Ma Foya”ではBrandee Youngerによる素晴らしいハープの演奏が聴きどころになっている。

『Lagos Pepper Soup』はアフリカン・ディアスポラのジャズとして意欲的な作品である。Olatujaのベースはアルバムを通じて活気に満ち溢れていて、その創造性は尽きることがない。彼の作曲技術とヴォーカリストや演奏者の目を見張るようなゲストたちのパフォーマンスも相まって、『Lagos Pepper Soup』はアメリカのジャズとアフリカ大陸の音楽の間の豊かな交流の一例であり、大胆でカラフルな作品である。

By John Morrison · June 19, 2020

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