<Bandcamp Album Of The Day>Wildflower, “Season 2”
ロンドンのシーンの実り多く継続的な成功の秘訣は、ジャズをワールド・ミュージックと捉えていることにある。イギリスの政治的分断を招いた移民の波はまた、中東、アフリカ、そのほかのヨーロッパの国々、そしていうまでもなくかの大英帝国の名残(つまりジャズの生誕地、アメリカ)から生まれたサウンドによってこの国の地下音楽の世界をも満たした。Wildflowerはこの混血文化の代表例ではないが、それに近いところがある。サックス奏者のIdris Rahmanはベンガル人の父親とアイルランド人の母親を持ち、ベーシストのLeon Brichardはフランスの国外居住者、ドラマーのTom Skinnerは白人中流階級のロンドンっ子である。文字通り彼らの2作目となる『Season 2』はこれらのバックグラウンド全てへの敬意を表した魅惑的で瞑想のようなサウンドスケープである。
たとえばBrichardはトランス・ドローンの魔術師であり、“Under the Night Sky”や“Distant Thunder”での声高な即興演奏はヨーロッパのEDMとモロッコのグナワ音楽双方への目配せとなっている。Rahmanのモーダルなテナーの演奏ー加えてこの作品では“Light in the Sorrow”でクラリネットを、“Where the Wild Things Dance”でフルートを演奏している—はインドとJohn Coltraneのスピリチュアリズムの両方から同程度に着想を得ているようだ。一方Skinnerは音楽的/文化的なスポンジとして、ヒプノ・ファンクで“Mirage”の根底を支えながら“Rush”では西アフリカ風のアクセントで低音を保ち、“Where the Wild Things Dance”ではTony Williams風のシンバルでスウィングし、フィナーレがアクセル全開の発作になってしまうところをグッと抑えている。- Michael J. West, February 11, 2020