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<Bandcamp Album of the Day>Bill Nace, “Both”

ギタリスト・Bill Naceはこの15年間、ロックと即興演奏、そして純粋なノイズが交わる交差点に居続けてきた。彼には未解明の緊張状態を好む傾向があった:彼は共作者たちに静かな不安とともに演奏するように強いるが、それと同じくらいの頻度で彼は芝居がかって演奏を放棄してしまう。Kim GordonとのBody/Headでのすこし一般よりな作品でも、Naceは普段と変わらない集中力でテクスチャと形式にこだわり、伝統的なコード奏法をしたかと思えば、楽器を金属片や木片で爪弾き、どんな変わった音が出るのかを確かめていた。

絶え間ない共作の時期を経てから初となるソロ・アルバム『Both』にはこれまでと似たうす暗い激しさが吹き込まれている。歪められたループが不安を煽るような非リズム的反復の中で上昇と下降を繰り返し、数カ所ではディストーションが全てを謎めいたヒス音の膜として覆ってしまう場面もある。“Part 3”は彼の空っぽな空間へのこだわりを示していて、アンプが立てる雑音の微かなブンブンという音が最初の数分間を占め、その後彼は以外なほどに穏やかなフィードバックの音の糸を焦らしながら、それを音の風景の遠くの方にたれ下げている。全てがギターによって演奏されているという事実にも関わらず――“Part 5”でのシュルティ・ボックスによる協和音のドローンを除けば――“Part 8”になってようやくNaceはどうにかこの楽器らしく聴こえる馴染み深いパターンをなぞっている。その瞬間はまるで、そこまでのアルバム全体にみなぎっていた謎めいた暗がりに寄る緊張状態が解け、ほっと息をつくような瞬間に感じられた。

Naceはアルバムのタイトルの背後にある意味を明かしていない。しかし『Both』は彼のこれまでの作品を蒸留したものであり、それらの延長線上にあるものであるという、その二重性が特徴であるように思える。この音楽の根底には深いアジテーションの感覚があるのだが、同時に自発性もその核心にあり、Cooper Crain(Bitchin Bajas、Cave)によるプロダクションがNaceに今までにない多次元的な感覚を与えている。その結果、この聴取体験はシュールで没入感がありながら、心をつかむどころかこちらに取り付いてくるかのようである。

By Jonathan Williger · May 20, 2020

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