<Bandcamp Album of the Day>Black Nile, “The Further Side”
昨年発表されたBlack Nileのデビュー・アルバム『Sounds of Color』は、AaronとLawrenceのShaw兄弟によるR&B、ヒップホップ、ジャズの混合音楽ーー歴史と現在に同等の敬意を払い、90年代後期のソウルのねじ曲がった一撃からモダンな西海岸の即興演奏に至るまでを統合していたーーを世に知らしめた。この兄弟はL.A.で、クラシック・ピアニストの父がありとあらゆる音楽を家で演奏しているような環境で育った。View Park Prepの学生として彼らは自国の音楽や、キューバ、ブラジル、スペインの国外の音楽を学び、Los Angeles County High School For The Arts在籍時には街中をギグで周り、自分たちのサウンドを確立していった。「今の音楽」と銘打たれたBlack Nileは大まかに言えばジャズに根ざしてはいるが、決してそれに縛られてはいない。
この二人組は12月にリリースされた『The Further Side』でもその姿勢から大きく外れてはいない:『Sounds of Color』が宇宙的なジャズ・フュージョンであったのに対し、この新しいアルバムではより地面との距離が縮まり、歩き回るような広がりは流線型の楽器の演奏にとってかわられている。『The Further Side』はオークランドのDJが初めてLAを訪れるという物語を用いて、LAのブラック・コミュニティを案内する作りになっている。その途中では、ラッパーのWiseが彼のコミュニティが真に何であるかを正確に言いきっている:「白いTシャツとチャック・テイラーだけじゃない」と彼はアルバムの中盤近くのバウンシーな1曲 ”Inglewood” の中で皮肉っている。他にも、”Crenshaw” はサウス・セントラルの夏の美しさに敬礼し、同時にそれを破壊しつつあるジェントリフィケーションを嘆いている。
アルバムの終盤に近づくにつれ、”That's Balzy” や ”NoBrainer” において、『The Further Side』は直截なファンクへと行き着く。印象的ではあるが、この作品の白眉は天空へと近づいていくようなサウンドの ”Gumbo, First Serving” や ”Second Serving”、”Third Serving” といった序盤のゴージャスな組曲で、スムース・ジャズ、フリー・ジャズ(”Gumbo〜” から”Second Serving” への流れ)、そしてクワイエット・ストーム・ソウルを混ぜ合わせたかのようなそのサウンドだ。これこそがBlack Nileの切り札である。つまるところ、この『The Further Side』は有望なデュオによる優秀な作品であって、それ以上でも以下でもないのだ。
By Marcus J. Moore · January 05, 2021