<Bandcamp Album Of The Day>Shabazz Palaces, “The Don Of Diamond Dreams”
Shabazz Palacesは長年、より良い世界というのは100%政治的なヒップホップでも、100%物質主義的なヒップホップでもカヴァーしきれないような、そんなルートで可能になるものであるという立場で活動してきた。そこでは“Divine mathematic(=神秘数学)”と“Designer fabric(=デザイナー仕立ての衣服)”が矛盾したものではなく、お互いを補完し合う表現として現れる場所である。「スワッグ」とは人それぞれが生まれ持った性質のことであって、お金を出して買えるものではない。Digable Planetsとしての活動ははるか昔の思い出となり、ShabazzのフロントマンであるIshmael Butlerはここ数年彼の中のPharoahe MonchとPharoah Sandersを足して2で割ったような存在に磨きをかけ、力強く、大地に根ざしたスピリチュアリティを注入してきた。
『The Don of Diamond Dreams』はShabazz Palacesがこれまでで最も「やりきった」作品となっている。Butlerは自身の詩的権威に新たな自信を持つようになり、彼とマルチ奏者のTendai “Baba” Maraireは実験を決して止めることのないヒップホップ・チューンを作り上げた。元・THEESatisfactionのシンガー、Stas Thee Bossをフィーチャーした“Bad Bitch Waiting”はまるで、Junior M.A.F.I.A.の“Get Money”のブギー・ダブ・テイクのようである。もしサイバーパンクが実際に起ったら、の話ではあるが。アルバムの最後の曲“Reg Walks By the Looking Glass”は豪華でサイケデリックなソウル・ジャズである。Carlos Overallによる、深くリヴァーヴのかけられたソロが楽曲を支えている。
アルバム全体を通して、Shabazz Palacesは多くの音楽的領域に深いインスピレーションを見出している。“Fast Learner”では澄み切った青空に驚嘆するためにダウンビートなオートチューン・ラップが目を覚まし、Purple Tape Nateのゲスト・ヴァースがが超越を謳歌している。“Wet”では以外にもMigos/Thundercatの軸の上で回転し、弾むようなキラキラしたコードから煮え立つベースの演奏へと変化していく。そして“Thanking the Girls”の内省的なスローモーション・ニュー・エイジ・ブーン・クラップは、彼が人生で出会った女性たちを励まし、地球の湾曲が見えるくらい頭を高く掲げようと鼓舞している。「瞑想的な激しさ」というのが矛盾したフレーズではないとしたら、それは『Diamond Dreams』にぴったりのフレーズである。
By Nate Patrin · April 13, 2020